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魔王様の愉快な仲間達





「それにしても、凄く強くなってた。なにしたの?」

「あぁ、人間やめたって言ったろ?魔族に転生したんだよ」

「転生?」

「勇者に与えられる固有スキルにそーゆーのがあってな」

「そ……」

「凄いだろ?」

「別に……」


……素っ気ないっすねー。

話しかけられては答えて終了の会話を続けながら、魔王城を歩く。


それにしても魔王城って廊下とか扉とか部屋とか無駄に大きいイメージあったけど、ほんとだったんだな。

廊下は大きな道路みたいだし、ドアなんか軽く見上げるような大きさで、もはや門だ。



「今思ったんだけど、どこに向かってんの?」

「会議室」

「………それ、俺も行くのか?」


俺ってば一応元勇者だし、なんかあんのかね。

あ、もしかして親睦会的な?

違いますね、そんな呑気なことしてる余裕無いですもんね。


「当然」

「さいですか」


それからは会話がなくなり、無言のまま会議室に着いた。


「ここ」

「ほほう?」


会議室の扉は、なんと言うか、普通。


いやマジで、普通。


ちょっと豪華なだけで地味とかじゃなくて、本当に普通。もう隣の部屋の扉と変わらないレベル。


よくここだって分かったなーって感心してたら隣の部屋が開いて、中から若いエルフの女性が出てきた。


「クーナ、こっち」

「……」





………………これは恥ずかしい。




見てるこっちが恥ずかしいくらいだ、魔王の城なのに魔王様が部屋間違えてどうすんのさ。しかも、案内の時に。ここって言った後だから誤魔化す事も出来ない。


チラッとクーナを見ると、クーナは何事もなかったかのように会議室に入っていった。


「あなたは入らないの?」


むしろ俺が変な目で見られた。



………………解せぬ。






会議室は会議室とは名ばかりの物凄いアットホームな感じで、部屋にある椅子や机なんかは、もうただの食卓にしか見えなかった。


椅子には7人の男女が座っていて、椅子が1つしか余ってないところを見るとクーナが最後だったようだ。さっき部屋を間違えたところといい、方向音痴なのか?


この光景を見てると俺の中の会議室のイメージが音をたてて崩壊していく。ほのぼのしすぎだろ。


ここ………魔王城だよね?

外装とのギャップが凄いんだけど………

魔王様は部屋間違えるし。


でも、中にいる人達は全員魔族だ。

長方形の机の右側にさっきのエルフの女性、その奥に竜人?の女性、左側には獣人の女性、その奥に人魚か?人魚の女性。1番奥の席にはドワーフの男性、その隣は空席。


クーナは、クーナの執事服と似たような物を着た白髪の厳つい男と話していた。


他の人の服も執事服っぽいの来てて、そこら辺も何かほのぼのしてる。


ペアルックですってか?仲良しかよ、仲良しだな。


多分あの空席にはクーナと話してる厳つい男が座っていたんだろう。

自然とクーナの席は1番手前になるが、まさかこれいつも最後に来るからこの席なのか?

方向音痴な魔王様か……………



「で、新顔がいるってことは──」

「そう、勇者」




───勇者。




その言葉を聞いた時、全員の時間が止まった。



「…………勇者か」


そして、止まっていた時間が動き出すと同時に全員の視線が俺に集まる。


やめろよ、恥ずかしくて帰りたくなっちゃうだろ。

帰る家、無いけど。


「おい勇者、名前は?」


クーナと話していた男が名前を聞いてくる。

やめろ、お前が1番顔怖いんだから。

こっち見んな、睨んでるようにしか見えんよ。


「人に名前を聞くなら、まず自分から言いなよ。マナーだ」


普通に名乗ってもよかったが、言ってみたかった台詞があったので言ってみました!


まず自分から言え!とは、この顔を見ながらじゃ言えなかった。


そこまでの度胸は出て来なかったよパトラッシュ。


「それもそうだな、俺はプラム、魔人だ」

「あぁ俺は朝霧 陽、半魔神だ」


そう言って握手する。

…………ごくごく自然に握手したが、ここにも握手する文化ってあるのか?

と言うかビックリするくらいフレンドリーだな。

顔怖いって言ってごめんよ。


「不思議そうな顔をしているな。握手はここでも有名だぞ、初代勇者が住んでいた国のマナーとしてな」

「……?そうか」


普通、宿敵のマナーなんて学ぶものか?


「それにしてもアサギリは半魔人なのか?」

「あ、あぁそうだが?」


するとプラムは難しそうな顔をして黙り混んでしまった。

…………何でだ?


「プラム、人じゃなくて神の方よ」

「あっ、あぁ!なるほど、ややこしいな」


エルフの女性がプラムの勘違いを正した後、そのまま自分の自己紹介を始める。


「私はミーア、見ての通りエルフよ。よろしくねハル」


ミーアはすらっとした背の高い人で、まさにエルフって感じだな。長い金髪が邪魔なのかポニーテールにしてて、それが凄い似合ってる。


「こっちこそよろしくな」


それを見た獣人の女性が、今度は私の番と嬉々として自己紹介を始めた。


「ボクはアーティ!分かりにくいかもだけど狼の獣人だよ!よろしくねハル君!」


灰色の耳がすごく激しくピコピコ動いている。

元気一杯だな、ムードメーカーっぽい。


「あぁ、よろしくなアーティさん?」


アーティとも握手する。


「あははっ、アーティでいいよ」

「あっ、じゃあ俺もハルで──」

「それはダメ」

「……何でだ?」


君呼びに、こだわりがあるのか?

頑なに君呼びがいいのか!?

君じゃないとだめなのか!?

君呼び……ちょっとだけ恥ずかしいんだけどなー。

アーティってば俺の胸より身長低いし、なのに君呼びって何かむずむずする。


そのまま自己紹介の流れになったようで、各々自分の名前と種族をいい始める。


「ワシはドワーフのオーリンじゃ」


立派な髭をたくわえたミニマッチョの典型的なドワーフのおっちゃんや。

腕は丸太みたいに太いし、胴なんか樽みたいだ。


「わたくしはマルメロ、見ての通り人魚です」


マルメロさんは立つと地面から若干浮いていて、よく見ると水の膜が体を覆っていた。

人魚って陸だと結構大変なのね。

いること事態、驚きではあるが…………


「ぼくは……リアム。こう見えて……巨人」


一体どこら辺がこう見えてなのか聞きたいな。

かなり大きくなったはずの俺が見上げるようなでかさだぞ?こーゆーのがいるから、廊下とかドアとか無駄にでかかったのね。


「私はフィリール、竜人だ」


クーナみたいな寡黙家がこんなところにもいたよ。

あー、でもクーナより分かりやすいな。

クーナの表情筋ってば瀕死だし、あのままじゃ死んじゃいそうだよ。

今度引っ張ってストレッチでもしてやろうか?


……………やめよう、殺される気がする。


フィリールさんは、こめかみの角と赤い尻尾以外は人間とほとんど変わらないな。



と言うかフィリールさんも執事服っぽいので!

ズボンだから!?お尻凄いことになってんだけど!!

しっ、しっぽの穴が!!


特注品なんだろうな、穴は布を破ったんじゃなくて元々開いてたみたいで、金属の輪っかみたいのがあった。


ふぅ、あんまり見ないようにしよう。

失礼だし、俺は変態じゃないし。



……………もう十分見てるとかは言われたくない。


努力は……したんだよ?




全員が名前を言い終えたところで、クーナが椅子に座った。


「自己紹介終ったから、会議、はじめる」




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