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いつの間にか不死身





「勝負にすらならなかったな」


物言わぬ屍となった勇者達を剣で突っつきながら言う。

勢い余って殺っちゃった俺が悪いんだが、余りにも哀れだ。


「しかし、みんな逃げるのに必死だな」


思った事を呟きながら、走って逃げていく国民達を見る。

そいつらには助けたい人などいない。

ただ死にたくない、怖い場所から逃げたい、その一心で走る。

それ以外の事は眼中に無い。

だから、子供を置き去りに走ってく奴もいるし、邪魔な人を蹴り飛ばしたりしてる奴もいる。


大パニックだ。


慌ててる奴を見ると、落ち着く的な?

そんな感じなのか、この光景を見ていられない。

苦々しい思いで、どうにかなってしまいそうだ。

原因が何言ってんだよって言われたら、その通りで何も言えないんだけどね。


あぁ、何か泣きそうだ……


俺が大切にしたかったもの、大事だと思ったもの。


ここには、それが一つもない。



「ほーんと…ここに守らなきゃいけない理由って……あったのかなぁ?」


俺は悲しいんだろうか?

もし悲しいと感じているなら、それは何でだろうか?


きっと、今まで綺麗なものしか見てこなかったからだろう。


初めて人の醜さを肌で感じて、ちょっとナイーブになってるんだな。


そう考えると、やっぱ元の世界の親とか兄弟とか友達とか、すごいよ。今まで、こうも汚い人間がいるなんて知らなかった。


分からなかったよ。


何だか、無性に元の世界に帰りたい。

帰り方、知らないのにな……


子供の泣き声やら、罵声の声が、今までより心に響く。

ホームシックになったからか?


「さっさと終わりにしよう」


『反転』でこの街の中の人間の心臓の動きを止め殺す。


人々はあっという間に倒れ──死んだ。


「ふぅ、ちょっと疲れた。魔力を使いすぎたかな」


…………独り言が多いと早死にするんだっけ?

ヤバイな何か順調に増えてる気がする。

気を付けとこう。


気を取り直して、やらなきゃいけないことを淡々とやっていく。


まず手に持ってる魔剣で手のひらを少し切り、滲んできた血を刀身に塗る。


「──魔剣よ──」


「──我が魂を見よ──」


そう言うと、魔剣の刀身がうっすらと光りを放ち始める。

これは魔剣の所有者の情報を送ってる?らしい。

この世界の人間は元から自分の情報を頭の中で見れるらしいが、俺のような異世界人、勇者は聖剣を使いそれを行う。


馬鹿が聞いてもいないのにペラペラ喋ってくれていたから助かったよ。



それにしても、こう言ったところからも勇者と聖剣が切っても切れない縁で結ばれていることが分かる。

ほんと、無いとなんも出来ない。


魔剣で同じことが出来たときはホッとしたよ。

出来なかったらどうしようかと思った。


ちなみに、いつもこんな面倒くさい手順を踏まなければいけない訳では無く最初の時のみだ。

今回は転生してるからか見れなかったので、はじめからやり直してるのだよ。


「お、来た来た」


今の自分の情報が頭の中に流れ込んでくる。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


名前:朝霧 陽 種族:半魔神 性別:男


LV65

体力:25400/25400 魔力:25600/31800 物攻:25400

魔攻:29400 敏捷:24600 物防:26200 魔防:25800


固有スキル

【反転】【不滅】


スキル

〈魔法LV2〉〈剣術LV7〉〈体術LV7〉〈第六感LV6〉


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「あれ?転生する種族は魔族にしたはずなんだけどな……」


まあ、人間じゃなきゃいいか。

種族が半魔神になったからかステータスがバカみたいに上がってるな。レベルは申し訳程度や。ちなみに俺の元のレベルは48、ステータスは大体6000くらいだった。こうしてみると異常さがよく分かる。あ、下の方を見るなら、そこに転がってる勇者達はレベルが……たしか2~30くらいで、ステータスは3000くらいだったかな?元の俺と比べても半分くらいのステータスしかない。


でも、それだけの戦力差を埋めてしまえるのだから、勇者の持つ固有スキルはすごい。この世界は100もステータスに差があれば、見て分かるほど動きが変わる。たとえ4対1でも3000の差は簡単には埋められない。全力で戦った訳じゃないが、それでもひっくり返せた所は流石勇者の力だ。


固有スキル自体はそんなに珍しくは無く1000人に1人くらい存在するが、どれも大量に魔力を必要とするため奥の手に残しておくのが常識となっている。しかも、発動に必要な魔力を常に意識しなくてはならないため結構大変で、使いこなすには相応の努力が必須なんよ。


しかし、その常識をぶち壊して使えるのが、勇者。

なんと、勇者の持つ固有スキルは使用に魔力が要らないと言う特性を持っていて、好き勝手に使いたい放題。だから、勇者は戦闘経験がほとんど無くても安定して強い。


俺の『反転』は何故か使用に魔力が必要だけど、例外みたいなもんだ。持ってるの聖剣じゃなくて魔剣だし。


固有スキルと言えば新しく追加された『不滅』って、これ反則だな。


【不滅】:魔に列なる者がいる限り、何度でも蘇る。


無敵かよ……。

俺を倒しても、第2第3の俺が────

みたいな?


「本格的に人間をやめたみたいで、なんか感慨深いね」


ではでは、お楽しみの物色を始めようか。



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