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魔人の視線




「─────」


さっき………遠目で見たような生気の無い目じゃない。


明らかに………意思を持って俺を見ている。



しかしその目に光は無く、まるで感情を読み取ることができない。



ただ、見ている。




そんな魔人に見られた俺は、さながら蛇に睨まれた蛙のようだ。


声も上げられず、凍ってしまったように体が動かない。


ついさっきまでの震えも、荒い息も、何もかもが止まってしまった。




いつまで見つめ合っていたんだろうか。



ふと──魔人が微笑んだように見えた。




だけど、すぐ魔人の体が空に溶けるように消えてしまい、そんなことすぐに忘れてしまった。



そんなことより───



「なっなんだこれ!?」



───剣を持っていた右手が凄いことになっていた。



肘の少し上までボコボコ血管が浮き出て、二回りくらい大きくなっていた。



しかも次第に指先から赤黒く変色し始め、血管と共にそれが広がって行く。



ビビった、めっちゃビビった。



そんで剣を離そうとした時、手が開かない事に気づいた。


俺の右手はつった時みたいに、むしろ剣を強く握りしている。



左手で無理矢理ひろげようとしたが、アホみたいに力が強くて断念する。


こんな風にあたふたしてる間に変異は胸や首にまで及んでいて、もう腕を切るのも遅そうだった。


変異は強烈な違和感を除けば痛くも痒くもないので、このままでいいかな?と思い始めていた時だ。



今までとは違い、骨ごと磨り潰されるような、えげつない痛みを右手に感じた。



「あっあああああ!!!」



アドレナリンが仕事をしてないのか、無駄に痛みをはっきりと感じる。

そのせいで足から力が抜けてしまい、尻餅をついた。



「ぐっ……ぐぅ……」



痛む右手を左手で押さえつけ、激痛に耐える。


焦る心を落ち着けたところで、痛む右手を見た。



そして、唖然とした。



なんと、()()()()()()()()()()()()



しかも刀身の方ではなく、持ち手が…………



手のひらにめり込むように、突き刺さっていた。




「……………………は?」



呆けていたら、メキメキと音を立てながら少しずつ手の中に入って?来た。



「……ぐっ!……うぅ!!…」


今度の痛みは、声が出そうになるのを歯を食い縛って耐える。

後ろの方にはクーナもいるんだ。

これ以上無様は晒したくない。






「…………慣れて……来たな………」


既に持ち手はなく、刀身も半分くらい右手の中に入った。



出産逆バージョンみたいとか思いながらそれを眺める。



剣を手から抜こうと頑張ってみたが、痛いだけだったのでもう諦めた。




メキュ、パキと言った骨の異音だけがしばらく響きわたる。


「…………おわった?…………」


剣が完全に手の中に入り、今はもう傷跡すら見えない。


物理的に絶対入らない所に入っていくのは中々壮観だったぜ。


できれば忘れたい…………



腕は未だ太いままだが、さっきよりはマシになった。


変異も胸や首で止まり少しずつ治っていったので、本当に安心した。


腕もそのうち元に戻るだろう…………たぶん。



少しの間しげしげと手のひらを見たあと、ゆっくりと立ち上がる。


ここでステータスを見ようとして魔剣を出してあの時のハンカチみたいになっても困るからな。



ステータスは後でゆっくり見るとしよう。






▽▽▽






クーナのところまで戻ってきた。

行きと比べて、帰りはもの凄い順調だった。

痛くも苦しくもなかったし、行きもこのくらいが良かったなー。


「おかえり」

「ただいま」


さて、とりあえず──




──服を着よう。


ずっと全裸だったし…………





さて、いいサイズの服が無くなったのでシーツみたいな物にくるまって現在、行きと同じようにクーナに手を引かれ帰り道。



「そう言えば聞きそびれたが、あの魔人て誰?」

「父さん」

「なるほど父さんね、父さん?」

「そう。私の父親」

「…………えっと、名前は?」

「…イシュグナー」


イシュグナーって、本当にあのイシュグナーだったのか?


「………双剣は?」

「父さんは元々双剣は使わない」

「……………マジで?」

「本来は武器すら持たない」

「それは嘘だろ?」

「本当。父さん元々戦うの好きじゃないから」


次々と明かされる驚愕の新事実!!

地味に双剣を使わないのはショックだった。


二刀流ってやっぱり憧れだよね、使うのクッソ難しいらしいけど………


「あの人がイシュグナーだとすると、色々分からないことがあるんだが」


それに剣が体に入っちゃった理由も聞いときたい。


「いちいち答えるの面倒だから、一から説明する」



クーナが手を離した。

出口らしい。





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