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誰にも理解されなかった勇者の末路





飛び交う罵詈雑言。

死ね、くたばれ、地獄へ落ちろ等々、俺の死を願う声。


何故こうなってしまったんだろうか?

俺は何を間違えてしまったんだろうか?

それとも、まさかこれが正しい姿だと言うのか?


疑問は尽きない。


それでも一歩づつ、住んでいる人間とは正反対のように美しい街を歩く。


歩く度、身体中に打ち込まれた魔力を抑える杭が猛烈な異物感を訴えてくる。逃げられないように付けられた鉄球やら鎖やらが重い。


──痛いなぁ。


優しくない世界に泣きそうだよ。

そうこうしている内に、断頭台についた。

横に立つ貴族が声を張り上げた。


「これより!!魔族に魂を売った、人類の裏切り者である朝霧 陽(あさぎり はる)の処刑を始める!!!」


その声が響いた瞬間、地鳴りのように幾千幾万の雄叫びがこだまする。




──そんなにも嬉しいか?


俺が死ぬのが。


──楽しみで仕方なかったようだな。


人の死を見世物にするような、この処刑が。


──お前達にとって正義ってなんだよ?


それだけが分からない。分かりたくない。




膝を地面につけて、首を差し出すように項垂れる。


──ここが終点か。


俺は……何がしたかったんだろう。


誰もが幸せな世界、平和で、下らないことで笑い、幸福で満ちた世界。


俺はそんな国に、世界にしたかった。


だけど、俺がその輪に入れたかった人達は、ここにいる人達にとって邪魔だったらしい。



俺は悟った。

俺が信じた絶対的な正しさ何てものは無い。

あるのは血も涙もない事実。


『弱い奴が悪い』


なんとも皮肉だ。

世の中、正しいことは難しいのに、悪いことは簡単でシンプル。

まるで、やってくださいと言わんばかり。

俺はその中で正しくあることに価値があると思ってたが、周りはそう思わなかったらしい。


「よう、無能君。介錯は俺がしてやるよ」


性格の悪さが滲み出た笑みを浮かべ、声を掛けてきた奴なんかその筆頭だ。


「裏切り者の始末は勇敢なる勇者様がお勤めになさる!!」


こいつらは俺と同じく異世界、日本から来た日本人だ。

勇者として少なくない力を持ち、これまで多くの命を奪った。

俺も人の事は言えないが、ろくでもない奴だ。


「大罪を犯したが同郷の人間として、せめて自分達の手で終わらせてやりたいと勇者様は仰った!!」


全く、聞くに耐えないな。


「───、────」 「────」「──、───」「───、────」「────、────。──」


横の貴族の無駄に長い演説が終わり、介錯してやると言った勇者がゆっくりと近づいてくる。



俺の首を切り落とそうと、腰の剣を抜き、振り上げる。



そして──剣は寸分たがわず、狙い通り裏切り者の首を切り落とした。





それが地獄への片道切符とは知らずに……。




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