Chapter0〜その人生は敗北の連続①
「明日から来ないでくれ」
「…はい。」
人事部の部長が、告げた。
これで、通算6回目の解雇、か。
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俺の人生は、敗北の連続だった。
小中高と、なんの呵責なく問題なく虐められ、両親には放置され、高卒で就職した。目指すものなど何もなかった。両親も教師も、何1つ教えてはくれなかった。
就職しても、これは社会の為だ、みんなの為だと努力しようも、結局自分はどうなんだ?と身が入らず。向上せず。次第に周囲は冷たくなり、肩身が狭くなって辞めた。
それがついぞ今回で6回目になった。もはや絶望感すら湧かない。
「…あぁ。」
硬いせんべい布団の中にくるまりながら、成人男性の一人暮らしとは思えないものの少なさの部屋に一人、男はこぼす。
「もう、いいだろ。」
俺は、いったいどこで間違えたんだろうか。
「〜♪」
相棒の白い軽自動車に乗り、法定速度の60キロ増しで、オーディオの音楽を爆音にして走行する。時間は深夜2時。完全に不審者で、それでも気にならなかった。
だって、今日は「特別な日」だ。
全てのマナーとモラルを投げ捨て、解放される素晴らしい最後の日だ。
カーブに差し掛かるが、速度を落とさずに全力で曲がる。後輪が浮いたが、持ち直してしまう。つまらない。次はもっと速度を出そうか。
そんな中、反対側から10トントラックが走ってくる。ご苦労なことだ。焦った顔をしてこちらを見ている。安心してくれ。逆走しているのは君じゃないさ。
反対車線を走っているのは、俺だ。
「あはははははは!!ひぃははははは!!」
あぁ、月が綺麗だ。
死ぬには、いい日か。