桔梗の花言葉
「…て。起きて」
「…んぅ?」
優しい声が聞こえてきて、重たい瞼を開けた。
「ルドルフ!来てくれたのね」
嬉しそうに笑うエイミーの頭を優しく撫でると、
「エイミー。話があるんだ。」
と出会った時と同じ凪いだ海の様な声で言った。
「あなに?」
首を傾げたエイミーのハニーブロンドの髪をさらりと撫でると小さくため息をつき、話始めた。
「明日、カイダはシュトラール帝国に総攻撃を仕掛ける。」
「総攻撃?」
「嗚呼。シュトラール帝国は獣人などが多いうえ、肉体強化や魔剣などを使っているから全体的に接近戦に強い。」
「カイダは?接近戦に弱いの?」
「普通だな。うちの国は人族至上主義だから、魔法系の武器を輸入する伝がない。けど、それだとと負けるから、明日の戦いでは、商人達が持ち込んだ違法の魔法系の道具を使う。」
「んー?よく分かんないけど、勝てるといいね!」
エイミーはふにゃりと笑った。
突然、コホンと咳払いをするとルドルフはエイミーに花束を渡した。
「ありがとう。このお花は桔梗?」
「桔梗の花言葉を知ってるか?」
「えっと…」
ひとしきり悩むと、上目遣いで
「分かんない…」
と困り顔で言った。
「桔梗の花言葉は、『永遠の愛』だ。俺と結婚して欲しい。」
エイミーは微笑むと
「よろしくお願いします」
と言いルドルフの手を握った。
ルドルフは、
「ほ、本当か?!良かったぁ…」
と一気に脱力した。
「フフっ。緊張したの?絶対零度の人形も形無しね。」
とエイミーは楽しそうに笑った。
「そんなこと言わないでくれ…。断られるかと思った。」
「まぁ。どうして?」
「だって、俺は軍人だ。しかも、最前線で戦っている。将軍だから、手柄を立てたい奴や暗殺したい奴は巨万といる。だから、断られないか心配で…」
エイミーはルドルフが話終わる前に抱きついた。
「どうした?」
抱きついたエイミーのハニーブロンドの髪を撫でると優しく聞いた。
「何かね、幸せだなぁって思って!」
ルドルフが、不意に叫んだ。
そしてポケットから小さな箱を出し、エイミーに差し出した。
「開けてもいい?」
キラキラとした目でエイミーが聞く。
「勿論」
箱を開けるとエイミーが叫んだ。
「キャー!お洒落な指輪!ありがとう。とっても嬉しい」
ふにゃりと笑うと指輪を左手に嵌めた。
うっとりとしているエイミーに
「肌身離さず持ってて。きっと助けてくれるから。」
「うん!」
ルドルフは微笑むと、
「それじゃあ、帰ろうかな。」
と言って立ち上がろうとした。
「ダメッ!朝まで一緒に居て…?」
「分かった。」
「ありがとう。ふわぁぁ」
エイミーはコクリコクリと前後に揺れている。
「運んであげる。おいで。」
「んー」
目を擦りながらルドルフに身を委ねた。
軽々とエイミーを持ち上げるとルドルフは寝室まで運んだ。
しかし、残念な事にルドルフの腕の中で眠ってしまったエイミーはルドルフにお姫様抱っこをされていたのを知らない。