2人の出会い
これは多くの種族と文化が存在する世界の、人間の住む国「カイダ」で起こったと言い伝えられているお話。
暖かな春の日差しの下、1人の少女が木苺を摘んでいた。
少女はエイミーといい、誰にでも優しく天使のようだと皆に好かれていた。
しかも、彼女は、願いを叶える力をもっていたのだ。
「エイミー?どこにいるの?」
「今、戻りまーす!」
エイミーは、母に呼ばれ急いで家の中に入った。
家に入ると、母はスープを作っていた。
「エイミー。あら?また、木苺を摘んでいたの?また、木苺のタルトを作るの?」
エイミーは微笑むと
「えぇ。大好きな木苺のタルトを作るの!」
と言った。
「先にスープを作るのを手伝ってくれる?」
「勿論!」
その時、不意に扉が開いた。
「エイミー・アーノルドは居るか?」
凪いだ海の様な声がした。
声の主は、兄のマックスでも、その恋人のハンナでもなかった。
背が高く手足の長い男が立っていた。
「国王陛下のご命令により、一緒に王都に来てもらう!」
突然のことにエイミーはポカンとした。
しかし、すぐに怯えた表情で
「…あっ、貴方は誰ですか…?」
と、消え入りそうな声で尋ねた。
男は、エイミーを一瞥してから
「ルドルフ・フォード。カイダの将軍だ。」
と答えた。
エイミーは政治に特に興味がなかった上、住んでいる場所が田舎だったため、ルドルフの名前を聞いた事がなかった。
「ルドルフ・フォード?!あの絶対零度の人形?」
ルドルフはため息をついた。
「綺麗…綺麗ウルトラマリンの瞳ですね。」
ルドルフは目を細めると笑った。
「面白い。そうだ。言っておくが王都に来るのは決定事項だ。別れもあるだろうし出発は明日だ。」
次の日の朝
村中の人が彼女との別れを惜しんだ。
口々に「会いに行くから」、「手紙書くね」などと言っている。
母は大好きな木苺のタルトを渡してくれた。
「ありがとう皆。私も手紙書くね。」
泣きそうになったが何とか堪え、笑顔で別れた。
馬車の中で食べた木苺のタルトは、今まで1番甘酸っぱかった。
王都に着くと、息つく間もなく国王陛下と謁見をした。
国王陛下は冷酷な人だということは政治に疎いエイミーでも聞いたことのある噂だった。
「よく来たな。お前が願いを叶える娘か?」
「はい。そうです…」
国王陛下は満足そうに頷くと
「ならば、俺の願いを叶えろ!」
叫んだ。
エイミーは、不安そうな顔をすると申し訳なさそうに
「えっと…願いを叶えるには、代償が必要みたいなんですけど…」
と言った。
「代償?金か?地位か?」
髭を撫でつけながら国王陛下は聞いた。
「分かりません。私が決めてる訳じゃないので…」
と消え入りそうな声で答えた。
「フンッ。まあいい。俺の願いを叶えろ。俺の願いは隣国の領地を奪うことだ。」
「分かりました。一応聞きますが、代償を払う覚悟はありますか?」
「ある。」