01-In the morning
「さっさと起きな。この愚弟が」
そんな声で目を覚ますと姉が顔を覗き込んでいた。
姉に起こされるというのがどういうものかと言われれば、ただただ、不愉快なだけだ。
勝手に部屋に入ってこられ、荒らされる。
この前は確か、携帯のロックを解除して、彼女とのメールのやり取りを見てたっけ。
て言うか、弟の部屋に勝手に入ってくるなと言う話なんだけど。
でもって顔を洗わずに、食事した形跡を残したまま起こさないでほしい。
「姉さん、顔面から血が出て醜い顔がさらに醜くなってまともに見れない状態になってますよ」
「醜いって…、朝から冗談きついなー。二次元とかで頬にご飯粒ついてたりするのいるじゃん。ただのかわいい姉だと思って見逃してよ」
別に、冗談でもなく嘘でもなく。
本当に醜いと思うのだ。
昔はそんなことなかったんだけど。
こんなよそよそしい話し方もしてなかったし。
聡明な姉は憧れでさえあったけど。
だからといって。
ご飯粒の代わりに鮮血を付け。
取れたての新鮮な野菜を美味しそうに食べる姉ならまだしも、獲れたての新鮮な生肉を美味しそうに血を流しながら喰らう姉などというものを。
そんなモノを。
一体どうして自分の姉だと思えるだろうか。
醜いと思わずにいられないし、汚らわしいと、気持ち悪いとも思わずにいられない。
こんなモノは常軌を逸する、異常な、化物だ。
ただ、忘れてはいけないのが、姉だけではないということだ。
壊れたこの世界ではこれが正常であり、通常である。
何一つ、一般的なまま、変化も変容もしていない僕は。
化物しかいないこの世界で、膝を抱えて生きている。