9月 あきよ
内容はないよう…
彼は私など、愛してはいなかった。
でもそんなこと。
とっくの昔に気付いてた。
「………う、そ…でしょ?」
だけどこう言うのは、私があなたを純情に愛している健気で愚鈍な女、を演じているから。
だってあなたはそういう女を騙して突き放すのが、絶望に落とすのが、何よりも好きだから、あなたのためにそういう『フリ』をするの。
「私のこと愛してるって言ってくれたじゃない!」
それでも醜く追い縋るのは、私にはあなたしかいないとあなたに示すため。
するとあなたは、そんな私をとことん振り払って更に突き落とす。そして深く深く傷付いた顔をあなたに見せれば、あなたは酷く愉快げに嘲笑ってくれる。
「あなたのいない世界なんて、生きていく意味がない……私、」
そうして、あなたの目の前に、あなたしか目に入らない、憐れな女が一人、出来上がり。
「もう、生きていけない…」
それから私はあなたの目の前で死をちらつかせるの。
そうすれば、ほら。
優越感で満たされた、綺麗なカオ
そのカオが見たかったの。
…見れてしまえばもういらないわ。
だから、私は言う。
「………なーんてね。
ぜぇーんぶウソよ、
あなたのことなんて愛してないから」
さようなら?
清純な女には似合わない真っ赤な口紅を見せつけるように口角を上げた。
あ き よ
い え る
す た
ら
「ただあなたの愛が欲しかっただけ」
消えたのは、愛だったのかそれとも哀だったのか。
それは、誰も知らない。
END
トリッキーなタイトルだったのでトリッキーな内容にしたかったのです。特に詳しい設定はありませんが、この二人がこの後どうなったか作者のくせに気になります。




