8月 60円の価値
会話メイン。ほのぼの。
人間には一体どのくらいの価値があるだろうか。
暑い夏に食べる60円の美味しさよりも上だろうか?
仕事終わりに飲む500円の琥珀色のアルコールよりも上だろうか?
自分にご褒美、30万のバックよりも上だろうか?
ストレス社会に疲れた独身OLを癒す15万のトイプードルよりも上だろうか?
「どう思う?」
「言いたいことはなんとなくわかったけど、最後のは意味がわからない」
「……言いたいことがわかる…だと…?」
「まあ」
「自分でもよくわからないのに?」
「なんだとこのクソ野郎」
「女子にあるまじき言葉遣いだなまったく」
「ふざけんのも大概にしろ」
「僕は思うんだ」
「話そらしやがった」
「それらの価値は一律同じだと」
「……ほぅ」
「人が作る感動は、人間の存在と同じくらいの価値があると。命があるから感動があり、感動があるから生きていける。
値段の高い低いは関係ない。
価値の高低など計れるものでもない」
「…トイプードルは?」
「人間より高い」
「お前だけだ、すかぽんたん」
「君、今全国のトイプードル愛好家を敵にしたぞ」
「それほんとに全国にいそうで怖い」
「そんな君には、はいこれ」
「○リ○リ君…だと…?」
「君にも計り知れない60円の価値をあげよう」
「上からなのが気になるけど、ありがたくもらっておく」
「君のは定番のソーダね」
「あんたのは?」
「僕はこの夏一番人気の梨」
「え、あたしも梨がいい」
「いやだよこれしかないし」
「ちょっと待って、あたしとあんたの関係は?」
「恋人」
「じゃああたしにちょうだい」
「それなら僕に譲りなよ」
「「…………………」」
「半分こしようか」
「そうだね」
二人で食べた120円の価値は、それはそれは変えがたいもので、彼が言いたかったことはほんとうになんとなくでしか理解出来なかったけど(自分でもよくわかんないって言ってたし)私なりに解釈するのなら……。
「好きだよ」
「え?」
ってことかな?
ポカンとした彼を見ながらくすりと笑った夏の昼下がり。
END
このアイス、増税でもう60円じゃなくなったんですかね?ちなみに私はトイプードルを飼っています。