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6月 濡れたワイシャツ

王道。雨の日に近づく距離。青春ですね。






「びしょびしょになっちゃったね」






そういって髪を掻き上げるイケメンは…………誰デスカ?

























本日私は、単純かつ厄介な日直の当番でした。遅くなることは経験からわかっていたので、友達には先に帰ってもらいました。



「ごめんね西島くん、私日誌書くのすごく時間かかるの。だから先に帰ってていいよ?」


「いや、二人で日直だから…大丈夫だよ」


「でも、何か用があったりしたらほんとに先帰っていいからね?先生には話しておくし」


「ううん…別に帰っても勉強ぐらいしかすることないし…平気」


「そう…?じゃあちゃっちゃとやっちゃうね」




西島くんはクラスで一番頭の良い人ですが、野暮ったい前髪と分厚い眼鏡でクラスメイトから一歩距離を置かれるような人です。おまけに本人も明るいキャラクターではないので、どうにも周りに溶け込めていないようでした。


つまり彼はクラスに一人や二人いる地味な男子生徒です。


そして私もクラスに一人や二人いる地味な女子生徒です。


だからか、彼には仲間意識のような親近感を抱いていました。その上、彼は積極性はありませんが、穏やかでとても優しい性格だったので、…そう私は彼が好きだったりします。





「ふう…。やっぱり遅くなっちゃった」


ようやく日誌が書き終わったので先生に提出しました。先生には「今日もしっかり書いてあるな。高校生でこんなちゃんとした日誌書くのはお前くらいだ」なんて言われて頭を撫でられました。とりあえず私は子供扱いしないでくださいと行って逃げました。




「西島くーん、遅くなってご………」





めん、と言おうとしたら、彼は机に突っ伏して寝てました。そんな姿を私は初めて見たので、ついついじーと見てしまいます。


このまま起きなきゃ良いなあなんてちょっと思ったり…。いけないと思いつつも起こすのも憚られて、30分だけと思っていたら…






「…立花さん、起きて……」



「…ん、………え?」



「外真っ暗になっちゃった。早く帰ろう?…僕、送っていくから」




「………………………私、寝てた?」


「うん」


「……………………………………………………………………………………………いやーー!!もしかして寝顔見ちゃった?!不細工だったでしょ?忘れて!今すぐ忘れて!!!」



「………そんなことなかったけど」


「何?今なんて?」


「あ、いや別に…むしろごめん」


「やっ西島くんが悪いわけじゃ…なんていうか私の自尊心が、うん。なんでもない…ごめんなさい……」


「大丈夫だよ。気にしないで。ほら僕の寝顔を見たでしょ?それであいこだよ。僕だって起きたとき恥ずかしかったし…。



だからもう帰ろ?ね?」



「はい…」





まさかまさか好きな人に寝顔見られるなんて……ビックリして西島くんを責めちゃったけど彼は悪くないのに反省です。


でも西島くんの寝顔を見たことと一緒に帰れることがラッキーだなんて思う私は幸せものかもしれません。




***






西島くんと私はどうやら同じ帰宅方向らしいです。今まで見掛けたことがないのは何故だろうと思うくらいに近い距離でした。





「わ、雨っ?」




「近くに公園あったよね」


「うっ、うん」


「そこまで行こうか」




雨脚は強く走って5分の道のりで、二人ともびしょびしょになってしまいました。公園には屋根のついた休憩スペースがあり二人で飛び込みました。



「うーん…メガネが水滴で見えない……前髪邪魔………」



と彼がぼそりと呟きました。私は西島くんの素顔を見たことがなかったので、少しわくわくしながら眺めていました。




「びしょびしょになっちゃったね」



髪を掻き上げながら、そういった彼は





「…………………誰?」













「誰ってひどくない?」




そういって苦笑いしながら




「まあ僕が立花さんの予想以上の不細工だってことは認めるけどさ」









「違うっ、そうじゃなくてっ」










突然の変容についていけない私は彼にかける言葉が見つけられないのです。


西島くんと話す時、もちろん緊張していました。だけど、落ち着いた雰囲気だったからそんな些細な緊張もなくなっていきましたが、今は








「かっこよすぎて落ち着かない!」





「…………………え?」










「きゃっ、そんなキラキラした目でこっちみないで!」





「えっ……でも」





「西島くんがそんなイケメンなんて聞いてないよー!うわーん!」





「おっ落ち着いて、立花さん」




「落ち着かないぃーだって雨に濡れた綺麗な髪とかいつもは良く見えない切れ長の目とかすっとした鼻筋とか薄い唇とかきりっとした輪郭とか、濡れたワイシャツとかーー!!」





「西島くんのすべてがかっこよすぎてムリッ!」








「……………それって褒めてる?」







「…たぶん」







私がそういうと彼はりんご並に顔を赤くしました。そんなところはやっぱり西島くんで。


ついつい私は。








「…………………すき」





なんて言っちゃったり






「あっ違うからね!?顔がカッコイイからって訳じゃないからねっ!?顔がかっこよくてもやっぱり西島くんは西島くんだなあって思ったら、好きだなあって」



「僕もすきだよ」



「そうっ好きで………へ?」



「僕も立花さんが…好きです。


よかったら僕と付き合ってください」











「………はい」










END









「あっこれからは私の前でも私の前以外でもメガネは外さないでね!」


「…それってどういうこと?」


「素顔見てるとキンチョーするけど、他の人には見せたくないからっ」




「(キュン)…わかった、約束ね」






ほんとにEND

男の子視点も書いてみようとして挫折してます。続きを書いてみたいなぁとぼんやり思ったり。

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