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第二話 出会いました。・・・(人外だと!?) (上)

 予定より遅くなりましたが、第二話です。

 文字数が一万をこえたので今回は上と下。二つに分けて投稿します。

 (下)は日曜日までに上げますので少々お待ちください。


 

 第二話 出会いました。・・・(人外だと!?) (上)


 あれから幾度も意識の浮上を経験した。

 眠って起きて、また眠ってを繰り返す。

 月日の移り変わりも早いもので、気が付けば一年もの月日が流れていた。

 つい先日、一歳になりました。西京纏改め、鳳緋燕です。

 おめでと~。って、身内や家人や沢山の人達が祝ってくれたので、そうなんだろうな~ぐらいの感覚です。

 なんせ、ほとんど寝てたからね・・・・。

 俺の意識が表に出ない時は、どうやら無自覚、無意識な状態で、本能のまま赤ん坊ライフを継続しているらしい。

 おかげで、覚醒している間に腹を空かすことも尿意や便意を感じることも無く過ごすことができている。

 特殊な趣味を持っているなら、別だろうが・・・・。健全な精神である精神年齢二十歳の人間に授乳や排泄処理は耐え難いので、すこぶる助かっている。

 たぶんこれが、ジョウリの言っていた半覚醒ってやつなのだろう。

そう理解した。

そんなこんなで徐々に成長するにつれ、俺はこの状態を自然な形で受け入れるようになっていた。飛燕と言う名で呼ばれることにも違和感を感じなくなり、父や母、姉の存在は俺にとって掛け替えのない大切な存在となった。

あと、徐々にではあるが、意識が覚醒している時間が長くなり、逆に眠っている時間が短くなりつつある。それと同時に、身体をコントロールできる範囲が拡がってゆく。

最初は腕を動かし手足の指を閉じたり開いたりが関の山だったのだが。

首が座ってからは這って動けるようになるまでが早かった。

時機に間を置くことなく物を伝っての掴まり立ちが出来るようになった。

 普通、この歳でそれは早すぎてありえないのだろうが、何度も失敗と挑戦を繰り替えして経験を積み、力をつけたら出来るようになった。

 そうなると。人間、だれしも調子に乗るというか、はしゃぐというか・・・・。

 まだ無理だ。と心と頭で分かっていても、次は歩きたくなるわけで・・・・。

 ある日の昼下がり。家人が誰も側にいないことを確認してから、挑戦してみた訳だ。

 俺は近くに置いてあった机の縁で身体を起こして立ち上り。

そして思い切って手を離し、歩き出そうとした。

 その結果は・・・・。

 わかるだろ?


 見事にひっくり返えりましたよ、盛大にね。

 歩くことはおろか未だ成長しきれていない身体にバランスなんて取れるわけがなく。

 見事に勢いよく、額から地面と激突するハメになったよ。

 フハハハハッ!!

 やめときゃよかった。

 せっ、せめて、布団の上でやるべきだった・・・・。

 そう後悔しても後の祭り。

 いくら床に薄い布地が敷いてあったとはいえ、その下は平らに敷き詰められた石畳でしたとさ・・・・。

 しくしく・・・・・・(涙)

 まぬけにも程があるぞ、俺!?

 我ことながら情けなかった。

 その時、コントのワンシーンの様に両手を上げた状態で突っ伏した俺は。

 痛みと衝撃に打ち震えていた。

 両手で額を抑えながらゴロゴロとのた打ち回り、こみ上げてくる涙と格闘する。

 それに耐えきれる訳もなく。

 力の限り、あらん限り全力で。

 泣き喚くハメになりました。


 うん。それから後のことは正直、忘れたい。説明するのも恥ずかしいし・・・・。

 俺の声にびっくりして室内に飛び込んでくる家人達。

 そんな彼らをかき分けて、駆け寄る姉に抱きかかえられ、力いっぱい抱きしめられた。


「緋燕!!・・・どうしたの!?なんで!?緋燕!?大丈夫!!・・・心配ないよ!!姉様が来たよ!?ここに居るよッ!!泣かないで、泣かないで!?大丈夫だよ、大丈夫、姉様だよ」


 そう何度も言いながら、痛みに震えて泣いている俺を必死に慰め、背中をさすってくれる陽華。

 その間に、騒ぎを聞きつけた父や母、家人の中でも偉い人がやってきた。

 誰も見ていなかったのか!?とか誰それの責任じゃ!?うんぬんかんぬんとか言い出す輩もでたりとか、『んなもんどうでもいいだろうが!?』っと心の中で叫んでみましたが・・・・。

 自業自得だし、まだ言葉を話せない俺は何も言えません。

 薬師を呼ぶだの大丈夫だのと大騒ぎになってしいました。

 結局、母の手に委ねられた俺。


「母様・・・。飛燕。大丈夫?・・・・・・」


 心からの真剣な声で心配する姉の声。

 俺の額に添えられた母の手からは、暖かな温もりが伝わってくる。

 そんな中、頭の裏側へと突き抜けた衝撃にガンガンと襲いくる痛みで絶賛悶絶中の俺。

 母が何かをしたのだろうか。

 母の温もりが熱に変わり、身体の中を駆け抜けた瞬間、頭の中の痛みが嘘の様にスーっと治まっていった。

 じんわりとした痛みは少し残っていたものの、泣かなくても良いぐらいには落ち着いた。


「問題あるまい。・・・・まっ、これくらいでよいじゃろ」


 そんな言葉のやり取りが俺の頭上、背中越しで交わされる。そして・・・。


「たわけ。―――まだ早過ぎじゃ、焦るなと言うたであろう」


 俺だけに聞こえる。小さく呟く母。

 はい。すいません。ごもっともっす。

 母のふくよかな胸に顔を埋めながら、心の中で平謝り。

 痛かったのとか、泣いたのとか、恥ずかしかったのとか・・・。

 いろんな感情が混ざり合って疲れ果てた俺は、意識を手放し眠りました。

 その時。俺も流石に反省して心に深く誓ったのである。

もうちょっとだけ、大人しくしていよう・・・・。って。


 さて、それからというもの。俺の側には四六時中、常に誰かが張り付くようになった。

 ずっと見られていることに安心していたのも過去の事。今じゃ、鬱陶しくて仕方がない。

 え!?自業自得じゃね?―――それはそうなのだが、さすがにしんどかったりする。

 俺にプライベートはないのかぁー!?

 うん。無かったね。赤子だし・・・・。

 しばらくしてから、変化の無い状況に諦めて。なら、利用しちまえ~って考えて。

 とりあえず。今の俺に出来ることはなんだろう?って考えた。

 起きている間に大人たちや姉達の会話に聞き耳を立てて情報収集してみることにした。

 西京纏として培ってきた知識や経験、記憶に加えて補完してゆく。

 身体の方は歩くことは一時保留~。バランスをとって手放しで立つことを何度も繰り返してみた。今のところ、上手くゆく気配も無いのだが、崩れそうになる度に誰かが手を差し伸べてくれるのだ。遠慮などいるまい。

 だからさ、周囲のヤキモキした空気を気にせずに、開き直って毎日練習に励んでいる次第であります。

 そもそも赤ん坊は突飛な行動をするものらしい。これくらいやっちゃってもいいっしょ。

 勝手にそう解釈して、勝手に決める俺。

 反省はした。自重?―――するわけないじゃん♪


 普段、ほとんどの時間を室内で過ごしている俺。庭に出された時も、青い空と生い茂った竹林が視界に入るのだけれども、ほぼ、閉鎖された空間での生活なのだ。

 正直、刺激が足りん。

 そうそう。立ち上がる練習を繰り返していたら、いつの間にか立って歩けるようになったよ。今の所、二、三メートル程度だけどね。

 言葉も意識して出せるようになってきた。

父を『とー』母を『はー』姉を『ねー』てな感じで言葉少なに意思表示するぐらいだが・・・。

 進歩と言えば、進歩だろ?

 コレが赤ん坊の成長として普通なのかは経験が無いので分からない。

 変に思われているかも知れないが・・・・。

 まっ、成るようにしか成らんよな。今ではそう思うことにしている。


「緋燕~♪」


 家人に見守られながら、縁側で庭先の池や丁寧に配置された御影石を静かに眺めていた俺に、楽しそうな姉が満面の笑顔で近づいてくる。


「だっ!」


 姉に片腕を上げて返事を返す俺。すると陽華は、相好を崩して笑顔倍増。

 ニコニコ~♪からの二ヘラ~デレデレ~♪って感じ・・・。わかる?

 俺の一挙手一頭足がとても嬉しいらしい。

 最初のうちはなんか気恥ずかしさを感じていたのだが、正直、もう慣れた。ってか、諦めた。


「あのね~。今から練武をやるんだよ。飛燕も一緒。する?」


 する?と疑問形で尋ねるのだが・・・。

 言葉と行動が一致してないぞ、姉よ。

 既に連れてゆく気満々じゃね、あんた。

 心の中で呟きながら、小さく嘆息する俺。

 両手で既に抱えられていますし。

 まぁ、いいけどさ。練武を眺めんのは最近のお気に入りだし。

 手作りの押し車のせられて、俺たちは廊下を進みます。

 押し車は、某子ずれの侍の時代劇に出てきそうなやつですね。

 中には柔らかな座布団が敷かれていて、手すりは丸く整えられて、壁も含めて厚手の生地で保護がなされている。俺専用の移動車だ。

 行き先は庭のはずれにある壁に空いた穴の向こう側。この先へ行ったことは、未だ片手で数えるほどしかない。陽華と共に穴をくぐり、そこから両端を木造りの丸みを帯びた欄干のある石の通路を行く。上を見上げれば梁を通した屋根が、廊下の端から端まで通路上に伸びていて、雨を凌げるようになっている。子供一人を隠せるぐらいの太さの円柱形の柱が通路の両側でいくつも連なり天井を支えている。

 でかいし、長いんだよな、この通路。

 赤ん坊だから、余計にそう感じるのかもしれないけどさ。

 もっともこの通路どころか、俺の生まれたこの家全体が、とんでもなく大きいのだが。

 家っていうより、中華風の屋敷だね。

 だってね。ここから庭が見えんのよ。見通しのいい庭が・・・・。さっきまで居たのが部屋の中庭なら、こちらが本番。十数倍の広さはあった。もはや庭じゃないし、庭園だし。よくある、東京ドーム何個分だって表現あるじゃん?あれが、マジであてはまるって言えばいいか?

 大きな池があり、小舟が一艘、桟橋に止めてある。幾つかの小島に赤い曲線の石橋が架かり、全体を見渡せる場所には六角形の屋根のある休憩所が見えるし。

 地面には雑草も無駄に生えていない。長年、この家に勤めている庭師の手で日々、整えられているとのことだ。

 初めて会った庭師の筆頭。見た目は五〇代のおっちゃん。

小さな身体に不似合いな太い首の頑丈そうなオヤジ。工事現場の現場監督みたいな雰囲気だったのが印象的だった。ファンタジー世界のドワーフを人間にしたらこうなんのかな~。みたいな・・・・。

 父や母、姉の信頼も厚いらしく、しっかりと手入れの行き届いた庭を見ているだけでも、彼の仕事への意識。実直で繊細な気配りが垣間見える。

 さて、広い庭を横目に進むと目の前には観音開きの扉が一つ。見えてくる。

 陽華は押してきた車を扉の手前に置くと、無造作に勢いよく開け放った。


 溢れ出す日の光。彼女の背中を影にして、その向こう側から拡がり拡散する光。

 肌に触れる暖かく快い風と光の眩しさに、瞳を細める俺。

 眼を閉じて風の感触を楽しんでいる間に、扉を抜けて表へと出た身体。

 降り注ぐ陽光。体中に行き渡る柔らかな温もりに俺は身を震わせた。

 ゆっくりと胸いっぱいに息を吸い込むと、大きく深呼吸を行う。

 澄んだ空気が身体の細胞を活発にさせてゆく。


「ふふふふ♪」


 陽華の小さな笑い声に、俺は瞼を開けて頭上を振り仰いだ。

 なぜ笑う?姉・・・・。


「緋燕~。―――なんだか父様みたいだ・・・・」


 そうかな?自分では良く分からんが・・・・。

 そのまま、不思議そうに見上げてから・・・。


「はいはい」


 ぺちぺちと、小さな手で姉の腕の叩き、先を促す。

 平らな石畳の上を乳母車が行く。

 均等に綺麗にキッチリと配置された地面は、継ぎ目も比較的なだらかなので振動は余り感じなくて済む。


「ほら。飛燕。着いたよ~。見えるかな?」


 扉を出てから石畳の端の方に車を置く姉。彼女の言葉に身体を起こし、眼前に広がる光景を仰ぎ見た。

 そこに広がる景色は、まさに絶景といって差し支えのない、壮観な世界。

剣のように(そび)え立つ岩の山々、その間を縫うように積み上げられた石段の路。

 その上には真っ青な青い空。

 どこまでも続き、果ては見えず。


 絶世の蒼。

 蒼空。

 この言葉はこういう空を指し示す為にあるのだろう。

 天高く雲が棚引くも、深く、どこまでも澄んだ空。

 薄く淡い青から、少しづつ深い紺色へと突き抜けた。濁りひとつない純粋な蒼へ。

 肌に触れる風は、多少乾燥しているものの焼け付く感や、日本特有のジメッとした湿気もなく、非常に快い。

 岩山の下の方には新緑の大地と森。そして、人々の生活の営みが良く分かる田園が見える。そこにある稲はまだ青々としている。黄金の稲穂へと移り変わり収穫を待つまではもう少し時間が必要なようだ。

 遠方まで届く、自然の大パノラマを眺めながら快い風に眼を細めて堪能していた俺の上に、影が落ちた。

 どうやら家人の一人が気を利かせて日差し除けの大笠を立ててくれたようだ。

 うちの家人達は皆、親切でよく機転が利く。

 今、傘を立ててくれた女官さんも時々俺のお世話をしてくれるしね。

 名前は(しゅう)(れい)さん。現在は十六歳だというのだが、常に落ち着いた雰囲気を崩さずにいる。慌てた姿を見たことがこれまでに一度もない。

瞳の色は濃い黒色。黒い髪を背中まで伸ばして首の後ろでまとめた眉目秀麗な目鼻立ち。初見だと少しキツい印象を与えるクールビューティーなお姉さんだ。

 時々、いつの間にそこに居たの?ってな感じで後ろにいたりする。気配を感じないっていうより、自然と溶け込む感じ?存在感が無いわけじゃないけど、違和感なく何故かいつも気が付けば知らぬ間に傍に居る。そんな感じの人だったりする。


「緋燕。姉様は行ってくるからね。ここで大人しく見ているんだよ」


 俺の目線に合わせて屈みながら、陽華は言い聞かせるように言う。

その返事に応えるがごとく、俺は笑顔で姉の頬に触れる。


「ふふふ。緋燕は偉いね~。なんだか私の言葉が本当に分かっているみたいだね~」


 ぎくぅ。・・・と、内心、少し慌てながら、顔の表情は不思議そうに小首なんぞ傾けてみる。―――やり過ぎ?いえいえ、用心に越したことはありませんよ。うん。


「流石に。・・・・それはないと思う」


 俺の内心をカバーするようなフォローが入る。

 ナイスだよ、()(れん)さん!

 ひとまずほっとしながら声の主。門弟の一人に心の中で拍手を送る。

 見た目は秀麗さんより少し下の十四歳前後。短めの金色の髪に特徴的な碧色の瞳、陶磁石のような白い肌の美丈夫である。一見、男性でもまかり通る立ち振る舞いだが、紛れもなく女性であると、慎ましやかな胸がそれなりに主張していた。

 因みに、俺がこの世界に来て初めて会った原作ゲームキャラ。

 彼女が名乗っている志祭という名は幼名だったりする。

 本来の名前は(ゆう)(げつ)(えい)。姓を幽、名は月英。

彼女の一族の習わしで成人するまで名乗るのが志漣。成人後に名乗るのが幽月英。といえば分かり易いか?

 どこの諸葛の嫁?これって高順じゃねーの?などと前世でプレイしていたいろんな方々につっこまれたキャラなのですが。

幼い頃に志漣という名で旅をして、武や知識や見聞を広めていたって話だったのだが、まさか、うちに居るとは思わなかったよ。

 原作開始時は傭兵をしており『陥陣営』って呼ばれる戦術家として登場していた。

 俺的にお気に入りのキャラだったので、よく重宝していたからね。

彼女はもともと、(きょう)族という馬賊の出身で馬の扱いと弓は大陸随一の腕前を持つ。

口数少なめ、感情表現は少々苦手な年齢は二〇代後半って話だったから・・・。

年齢的に見ても原作キャラで、間違いないと思ってる。

この世界での成人は一五歳からなので、月英という名を聞くにはもう一年待たなくてはならないらしい。


「今日の練武は門弟のみでやる予定。気を抜くと怪我する。やめる?」


「大丈夫だってば、分かってる。志漣はいっつも心配し過ぎ~」


「そう。ならいい。行く」


「了~解」


 意識を引き戻す。

 俺が彼女のゲーム内での情報を思い出している間に、どうやら話はかなり進んでいたようだ。こちらを振り返ることなく、階段を下り始める二人がそこにいた。


 ご意見、ご感想お待ちしております。

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