私がいた世界5
7月のはじめごろ。
私は立夏と遊ぶ約束をしていた。
昨日の放課後に、立夏から誘われて遊ぶことになった。
私は、ものすごくうれしくてにやけが止まらないほどだった。
「あっ!どんな服着ていこう!夏だし、ワンピースかな?それとも、普通にTシャツ?どうしよう~・・・・。あ!お金は何円くらい必要なんだろう?全然使ってないから、たくさんあるや。あ!靴はどうしよう?歩きやすいようにスニーカー?それともサンダルかなぁ・・・。ていうか、どこに行くんだろう!?
髪形はどうしよう~・・・。いつもみたいに髪おろしていこうかな・・・。結んだ方が邪魔じゃないからいいかなぁ?あ~・・・!まとまんなぁい!!」
ずっと慌てていて、気づいたら待ち合わせの時間になっていた。
結局一番楽な恰好にした。お母さんもお父さんもいないので、メモだけを残して家を出た。
自転車なんて持っていないので、走って公民館まで向かう。
息を切らしながら着くと、まだ立夏は来ていないようだった。
「よかったぁ~・・・。」
私は、公民館の入り口の脇の石段に座って待っていた。
今日の最高気温は29度であり、外で待っている間少々辛かった。
石も、だんだん熱くなってきて、少し触れただけでやけどしそうだった。
待ってから、1時間近くたっただろうか・・・。
いっこうに立夏が来る気配はない。
私の頬や首筋をたくさんの汗が伝ってきていた。
喉も乾いてきて、頭がくらくらしてきた。私は、いったん公民館の中に入り、涼しいクーラーのきいてる場所で30分くらい休んだ。
そして、また外に出て待ってみる。
時刻は12時45分。
私がここについたのは10時くらいだったはずだ。
私は不思議に思いながらももうちょっと待ってみようと思い、また石段に座った。
すると、昼ご飯を食べていないため、空腹感が私を襲いはじめた。
仕方なく近くのコンビニに行き、おにぎりとお茶を買った。
そして、公民館の飲食していい場所に行きお昼ご飯を食べた。
そして、また外で待ってみる。
「・・・今日、もう来ないのかな。」
無意識に声が出ていた。
私は、うつむきながら立夏を待った。
もう来ないと、分かっていた。でも、日が暮れてくるまで待っていた。
午後5時になり、私は座っていた石段から立ち上がり、歩き始めた。
結局立夏は来なかった。
歩きはじめて30分、家が公民館から遠い山の近くにあるため時間がかかってしまった。
坂を上ってる最中に、一筋の涙が頬を伝った。
私は、それを袖でごしごしとふき取り、また一人、つぶやいた。
「・・・立夏・・・・約束は・・・?私、待ってたのに・・・・。」
そう言って、私は下を見ながら歩き続けた。
気づいたら家の前に立っていて、そのまま家の中に入った。
まだ、お母さんもお父さんも帰ってきていなかった。




