私がいた世界4
3年たって、6年生になった。
「今まで、なにもしてこなかったなぁ」
始業式の日にそう、誰もいない教室でつぶやいた。
6年生になったから、何か変わるわけでもなく、私はただただ3年間を無駄に過ごしてきた。
「はぁ」
今日になって、何度目のため息だろうか・・・。
数えきれないな。
私は、学校が終わってうつむきながら帰った。
そして、すぐに日記帳を開き、今日の出来事や今の気持ちを書く。
「つらい」とか「つまらない」とかそんなネガティブなことばかりの日記帳。
読み返しても、楽しくない。
私は、次の日もその次の日も何もないこの世界で生きることが詰まらないと思いながら暮らしていた。
そんなある日のことだった。
一人の女の子が私に話しかけてきた。
「ねぇ、空さんはみんなと遊ばないの?」
その少女は、不思議そうな顔をして聞いてきた。
遊ばないの?って、私は・・・・
どうして、輪に入ろうとしなかったんだろう・・・?
遊ぶなんて、考えたこともなくて、友達を作る技術は私にはないなんて思ってて・・・
「あ、遊ばない」
「どうして?楽しいよ?ねぇ!遊ぼう!」
その子は、私の手を引いて走り出した。
いきなりのことに、少し戸惑う。
でも、嫌な気持ちではない。どちらかというとうれしいほうだ。
私は、勇気を出して聞いてみた。
「あ、あのっ!名前は、な、なな、なんて・・・」
ちょっときょどった言い方になっちゃった。
「え?名前?もう、クラス名簿見てないの?私は、佐々木立夏だよ!よろしくね!空」
「う、うん。よろしく・・・ね?」
「もっと、はじけていーよ!!もう友達だから!」
友・・・達
友達・・・!
初めての、友達だ!!
私は、立夏が大好きになった。誰よりも大好きだった。
遊び終ってからも、一緒に帰って「また明日ね」って笑い合って、楽しかった。
これが私の『普通』になったかって思うと、胸が高鳴って・・・。
ドキドキするくらいだった。
なのにさ、どうして立夏は裏切ったんだろうね。
私に友達ができたっていう時点で、気づくべきだったんだ。
自分にこんなことが起きるなんておかしいって。
自分にとっては、異常事態なんだって。




