私がいた世界2
朝になり、瞼が自然と開いた。
私は、「また今日も同じことを繰り返すのか」、そう思い憂鬱になった。
こんななにもないつまらない日々を繰り返して何になる?
どうせなら、私が死んで凌空が生きていればよかったのだ。
凌空が生きていたなら、きっと「今日学校行くの楽しみ!行ってきまーす!」って感じなのだろう。
学校では友達に囲まれて、先生からの信頼されて、成績がいい。
完璧じゃないか。
どうして私が生きて凌空が死んだ?
この世界は、どうして幸せなものが早く消えて、不幸につまらない人生を送っているものが、最後まで消えなんだ。
ひどい話じゃないか。
私は、毎朝そんなことを考え、のそのそとベッドから出る。
ささっと学校へ行く準備をしてから、リビングへと向かった。
当然両親の姿はない。
テーブルに置いてあるメモには≪これ朝ごはん。食べ方は好みで勝手にして≫
とだけ書かれていた。
両親は共働きで、父は大学教授、母は看護師だった。
母は夕方から夜8時の間に帰ってくるが、父はいつも深夜だった。
だから、父の顔を見ることも少ない。
「はぁ、なんだこの生活」
私は小さくつぶやいた。
小さいころに描いた生活はこんなものではなかった。
両親と妹と私が毎朝毎晩一緒にご飯を食べて、リビングで仲良く笑いながら学校での出来事なんかを話して、一緒にゲームをしたり本を読んだりして、休みはいろんなところに出かけて・・・。妹とは喧嘩してもちゃんと仲直りできる、そんな生活を夢に見て描いていた。
それなのに、現実はなんともひどいものだ。
妹が死んで家族は減った。両親は帰ってくるのが遅く私はいつも一人でご飯を食べる。
母としゃべれば「そう」か「ふぅ~ん」これで終わり。父とは顔を合わせないし、話もしない。学校のことなんか喋れば「あんた、また失敗したでしょ?親にそんなこと話して喜ぶと思う?」なんて言われて、ゲームもしないし本も読まない。
描いていたものとは、まるで真逆だ。
私は、朝食を食べ終えランドセルを玄関に置いた。
そして、自分の部屋に行き外を眺める。
こんな田舎、どこに私の居場所があるのだろうか。そんなことを思った。
きっと、この家は私の居場所じゃない。そう思っていた。
凌空の居場所はたくさんある。私は、ひとつもない。
どこか、落ち着ける誰も来ない場所に行って、静かに暮らしたい。
私は時計をみてはっと我に返り、下に降りてランドセルをしょった。
そして、後ろを振り返り
「行ってきます」
そう呟いて家を出た。




