私がいた世界1
これは、私がまだ小学3年生の頃の話。
いつも目立たなくて、地味で暗い協調性のない子供の話。
小3の6月に、妹が死んだ。事故って、お母さんが言っていて、一生分泣いたかもってくらい泣いた。それからだった、母がとげとげしくなったのは。
毎日毎日学校から家を行き来する。
何も変わらない毎日。変わったことは、家が静かになったのと、凌空がいないことだけ。
両親を元気づける言葉をかけることができない自分が嫌いだ。どう言えばいい?どう言えば、元気になってくれる?
ずっとこんなことばっかり考えて、勉強にも集中できなかった。
でも、凌空のように何でもできる母自慢の娘になりたくて、たくさん勉強した。
「はぁ、今回も低い点数。42点か。全然だめじゃない」
一回も、良い結果は出なかったけど。
テスト用紙片手に、通学路を歩きながら言った。
「これは、また叱られるなぁ。」
なんて、そんなことを口にしながら歩いていた。そして微笑する。
家について玄関に入る。
「ただいま」なんて、返してくれる人もいなくて、でも毎日言っていた。
母は、6時くらいに帰ってきて、私はテスト用紙を見せた。
「また40点台?はぁ・・・。本当に勉強してる?空は1年生から40点台から抜けたことなかったよね?凌空はできたのに」
その言葉が心に突き刺さる。
「凌空はできたのに」
そう、凌空は何でもできた。
どうして私は何もできないの?同じ姉妹で、私の方がお姉ちゃんなのに。
私は、テスト用紙をお母さんから強制的に奪って、急いで2階の自分の部屋に行った。そうやって階段を上がる最中にも、母のため息は聞こえた。
バタンッ!!
勢いよくドアが閉まった。
はぁはぁと、息が荒くなった。手には、くしゃくしゃになったテストが。
それを、もっと強く握る。
「私だって、頑張ってる・・・!!きっと、凌空よりずっとずっと頑張ってる!!!だから、私は、褒められるんだよ、普通は!」
そう言って、自分を自分で慰める。
落ち着いてから、バカみたいと自分で思って日記を書く。
それが私の日課だった。日記は書かない日の方が多いけど。
それでも、なんでだか書く。
午後10時ごろ
私はベッドにもぐりこんだ。
電気も消してまっっくらな部屋に一人。毎日のように考えることがあった。
(凌空は、今の私をどう見ているんだろう。)
嘲笑っているのか。
それとも、ごめんねと謝っているのか
そもそも、私のことなんて見てないのか
「凌空ばっかりできて、どうして・・・。どうして私にはできないの?」
そうやって眠りにつく




