1. My hair , My stick fingers
茶色、金、黒。
目に映る様々な色、そしてきらきらきんと輝く細い糸。
私はそっと撫でると、そのまま持ち上げた。
「いただきますネ、のっぺらぼうちゃん」
そう呟くと、口元をそっと緩ませ 手に持っていた物を頭にかぶせた。
からんからんかんからりん。
かわいらしい音とは対照的に、私の顏は冷たく鋼のように固まっている。
それでも、いいんだ。
私は再び口元を緩ませ、きんきらの髪の毛を手で風になびかせてみせた。
このままで、いい。
これ以上を、望んでは、いけない。
慣れた手つきで身軽に屋根に登り、するするん と屋根から屋根へ移動し、見慣れた時計台が見えてくると足を止めた。
あああ 今日も あの人に 怒られるのでしょうか
うーん、と 大きく伸びをした。
気持ちがよくて、気分が上がってきて、頭にかぶっていたきんきらを取って投げた。
「また貴方はっ……!!いい加減にして!!」
顏の数センチ前でつばを散らして怒鳴る院長に、露骨に嫌な顏をしてみせる。
院長は私の顔を見てさらに眉を吊り上げたが、唇をわずかに震わせただけで、それ以上は何も言って来なくなった。
「いいじゃん、ちょっとくらい」
「ゆるしてあげてよー」
院長が複数の声に振り返ると、私と院長の二人だけのつもりだった院長室の、その壁にずらりと孤児達が並んでいた。
「まあ……!?」
院長が勢いよく立ち上がると、皆の肩がビクリと跳ねた。
「おい」
気付いたら、院長の肩を掴んでいた。
「なっ、なにをするの!?私を誰だと……」
「あ?」
皆の方を盗み見ると、安心した表情が見えた気がして、院長から手を離す。
「貴方は……一週間、お仕置き部屋で頭冷やしてなさい!!」
この年になって、お仕置き部屋はないでしょう。
吹き出しそうになったのを堪え、院長に向かって頷くと早速言われた通り部屋へ直行した。