第一話 メール
ちょっぴりがんばりました。
楽しんでいただけたら幸いです。
俺は、刈谷恭介。趣味は賭け事。普段はよく「頭が切れるやつだ。」とかいわれたりするが、賭け事になると、つい感情的になってしまう。それが原因で、大抵負ける。昨日、友人の桐野一平とパチンコにいったのだが、数万も負けてしまった。
―――そんな普通の大学生だったはずの俺が、閻魔様に出会うことになるんて、思ってもみなかった。
ことの始まりは、俺と一平に届いた一通のメールだった。
「そんな気ィ使わなくっていいって。」
高そうなレストランのレジの前、俺は一平にだけ聞こえるように言った。
「いやいや、昨日あんなに勝ったんだし、今日ぐらいおごらせてくれよ。」
一平は、昨日の興奮をいまだ忘れられないのだろう。顔がニヤついている。
まあ、こういってるんだし、おごってもらうか。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「おう。」
ここは銀座、俺たちは、レストランから出ると、いく当てもなく歩き始めた。
「どこ行く?」
俺が唐突にたずねると、一平が、
「俺ん家こいよ。」
といった。午後九時半のことだった。
一平の家で俺たちは、友達を数人呼んで、みんなでポーカーやブラックジャック、トランプのギャンブルをやった。
「金賭けねえと、やっぱ恭ちゃん強えわ。」
言葉どおり、俺は勝ち続けていた。百ドルからはじめた金は、すでに三千ドル。もちろんこの金は架空だ。
ブラックジャックで、俺が親。一平が大張り。なんと一千ドル。ほかのやつはミニマムの一ドル。完全に俺と一平の場になっていた。俺が一平に一枚目のカードを渡し、二枚目を引こうとしていたときだった。俺と一平のケータイがほぼ同時けたたましく鳴り始めた。
緊張していた場の雰囲気が、一瞬ふっと緩んだ。俺がその隙を狙ってカードを引く。そのカードを見た一平の顔がゆがんだ。一平はストップをかけ、次の人に回した。
・・・・勝ったな。俺は、ほかの人にカードを渡しながら思った。
そして最後に俺がカードを引く番。伏せられていた一枚目のカードを表に向け、二枚目のカードを引いた。
「――――ブラックジャック。」
一瞬の沈黙の後、周りから歓声が上がった。そして、案の定、一平のカードのカウントは23。バーストだった。
その日は、それで俺以外の全員が帰った。部屋に残ったのは、俺と一平のみ。二人でしゃべっていると、一平が思い出したように、
「そういえばさっき、ケータイ鳴らなかったっけ?」
そういえば鳴ってた。
「ああ、鳴ってた。しかも同時に。」
俺がうなずくと、一平が笑いながら言った。
「じゃあ、同時に見て、同時に読もうぜ。」
「なんじゃそら。」
ナに考えてんだこいつ。
「いいじゃんいいじゃん。同時な。同時。」
しぶしぶポケットからケータイを出し、開いた。着信一件。
一平の掛け声の後、二人の声が混ざるはずだった。
「せーのっ」
が、そうはならなかった。
「当選おめでとうございます!こちらへどうぞ!」
なんと、一平は俺と同じことを言った!つまり、俺と一平は、同じ時間に同じメールを受け取ったことになる。
ひとしきり騒いでから、よく読むと、読みにくい白の字で、住所が書いてあった。
「お前、なんかに応募したのか?」
俺が聞くと、そのまま帰ってきた
「お前こそ、なんかに応募したのかよ。」
「してない。」
「俺もだ。」
少し気味が悪い。
「じゃあ、何に当選したんだ?」
一平の言うとおり、何に当選したのかが全く分からない。二人ともできうる限りの記憶をたどったが、それらしきものは見つからなかった。
結局、俺たちは明日、メールに書かれたところに行ってみることになり、俺は自分の家に帰った。午前二時半だった。
俺は家に帰ってから、まずメールに書かれた住所を調べてみた。すると、そこは地方から東京に出てきた学生が下宿するような、何の変哲もないアパートの、二階の一番奥の部屋だった。そのことを一平に報告してから、俺はベッドに入った。
どうでしたでしょうか?
是非次の話もよんでください。