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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

どこかの異世界で

突撃・となりのオークは晩御飯

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/11

7月11日、タイトル微修正、少し内容描写を追加。

ああ、肉食いてー。


この三日ほど、人狼のルーナはまともに食事を摂れていなかった。

種族的に食い溜めは出来るのだが、それは「我慢ができる」のであって

辛くないわけではない。


普段は人間の女性だと種族を偽り、剣士として冒険者をしているのだが、

しばらく護衛も討伐も依頼が出ておらず、実入りがなかった。

報酬の大半を飲み食いに費やす悪癖があり、ろくに蓄えもない。


かといって薬草採集やら街中の雑用は性に合わない。

そもそもそれらは見習いや新人の救済的な安全性の高い依頼であり、

依頼があるからと言って受けるのは気が引けるのである。

これでも中堅冒険者だからして。


そんなわけで、ひたすら井戸水で空腹をごまかし、

今はたぽんたぽんと腹を鳴らしながら、町の外で小動物を狙っていた。

ウサギやら野ネズミやらモグラやらは農民にとって害獣扱いなので、

依頼がなくとも常時狩りの対象なのである。


しかし、殺気に満ち溢れているせいか、獲物が一向に姿を見せない。

太陽が出るか出ないかの朝イチから出張って、すでに太陽は真上にある。

彼女の集中力も忍耐力も限界に近かった。


せめて食べられる草とか木の実でもないか、と森に入ってみる。

肉にはかなわないものの空腹はごまかせるんじゃなかろうか。

周囲のにおいをかいでみたが、それらしきものは嗅ぎとれない。

諦めきれず、さらに森の奥へと進んでみた。


急に視界がひらける。

広場のようなところに、家と呼ぶにはささやかな構造物があった。

枯草を雑に積み上げ敷き詰め、どうにか雨露ならしのげるか、という代物。

町に入れない犯罪者あたりが作ったのか?と様子をうかがっていると。


出入口らしい穴から、豚面が顔を出した。オークである。


オークは人間に近いほどの知能を持ち、体力的には凌駕している種族。

集団で暮らしている場合、家らしきものも作るとは聞いていたが、

こんなところで一頭だけで生活するなんて話はかなり珍しい。


俗にいう「はぐれ」というやつだろうか。

しかし、これは好機である。数頭なら敗北も覚悟せねばならないが、

一頭ならよほど強い個体でない限り倒せる。

それに、町の近くなのだ。敵対種族であるオークは排除する必要がある。


風向きを確認し、オークに気取られぬよう足音も消して接近し、

足の付け根に剣で切りつけ、悲鳴を上げて倒れ込んだところにとどめを刺した。


一息ついて、家らしきものの内部を覗くと、小動物の骨が散乱している。

どうやらこいつ、周辺の小動物を食いつくしていたらしい。

ルーナは急に腹が立ってきた。こいつのせいで食料がないのか!


気づけばもう太陽も落ちかけていた。

夜目が効くので今から町に帰るのもできなくはないが、それより空腹である。

ふと仕留めたオークに目をやる。こいつ、もしかして食えないか?


モモとかバラとかいけそうな気がしてきた。モツはここじゃ処理できないが。

幸い火種に良さそうな枯草もたっぷりある。物は試しだ!


結果、血抜きができず今一つ匂いがキツかったものの、肉は食べられた。

人間社会で生きてきたせいで舌が肥えているのだが、空腹には勝てなかった。

しかし…きっちり下処理をすれば、オークって旨くね?イノシシよりも。

さすがに全部は食べられず、泣く泣く大半を土に埋める羽目になったが。


翌日、討伐部位のオークの耳を持って町へ帰還した。

遭遇戦で倒しましたと報告はしたが…おいしくいただきました、は黙ってた。

人型種族はさすがにゲテモノ喰い扱いで引かれてしまう。


数日後、ルーナはまた森の奥の広場に足を運んでいた。

誰に言い訳しているのか、またオークが住み着いてたら町の治安がー、と

つぶやきながら進んでいたが、肉目当てなのはバレバレである。

なにせ今回は血抜きのための道具まで持ってきている。塩もぬかりなく。


果たして、広場では別のオークがまた家を建てていた。

少し異なるのは、今回枯草ではなく、大小の枯れ木や枝を巧みに組んでいた。


ルーナは前回と同じくオークを仕留めると、早速血抜きと解体にかかった。

丈夫な木にオークを吊るし、血抜きをする間に枯れ木の家の中を確認する。

引っ越してきたばかりなのか、今回小動物の骨などはなかった。


血抜きも済み、部位に切り分けて水筒の水で洗い、塩をもみ込んで焼く。

前回期待していた以上に旨い。これはたまらん。


しかし、と我に返る。

オークが毎回ここに家まで建てて住み着くって、かなりヤバくない?

前回は枯草で今回は木材よ?次回レンガとか使ってこない!?

そう考えると少々怖くなってくる。しかも一頭だけ住むとは限らない。

オークは本来群れで生活する。十頭二十頭となるとシャレにならん。


今回も討伐部位の耳を持って町へ帰還したが、さすがに詳細な報告をした。


予想は的中し、事態を重く見た冒険者組合が数日後斥候に現地を確認させると、

建てられている家は数軒増えており、オークもその時点でもう六頭がいた。


腕利き中心に討伐部隊が組まれ、急襲作戦が発動。

人員は三十人強であったが、オーク側もさらに頭数が増えており、なんとか討伐。

一応の危機は回避され、出来ていた集落は焼き払われて定期的な監視下に。

監視員は第一発見者のルーナが買って出た。


今日もルーナは仕事をこなす。新たな食材の到着に期待して。

三匹のこぶたのつもりが、なぜかこうなった。

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