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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第四章「カセットテープの記録」
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第97話「目覚めと決意」

「凛!」


美波が凛を揺さぶっていた。強く。肩を掴んで。


「起きて!」


凛は目を開けた。


自分の部屋。いつもの天井。白い天井。


夢だった。でもあまりにもリアルだった。父の顔。父の声。すべてがリアルだった。


「大丈夫……?」美波が心配そうに見る。


「うん……」凛が答えた。「夢見てた……防音室の……真理子と美咲とお父さんがいた……」


美波が凛の額に手を当てた。「熱い……微熱がある……」


凛は自分の額に触れた。確かに熱い。37.3度くらい? いや、もっとかもしれない。


「記録の影響……」美波が呟いた。「身体にも出始めてる……」


凛は起き上がった。頭が少しふらつく。でも大丈夫。まだ動ける。


「時間は?」凛が聞いた。


「午後3時」美波が答えた。「4時間寝てた」


「そんなに……」


凛は窓の外を見た。もう暗くなり始めている。12月。日が短い。冬至が近い。


「凛」美波が真剣な顔で言った。「このままじゃまずい。記録がどんどん進行してる。早く残りのメディアを集めないと」


凛は頷いた。「MDと8mmフィルム。あと2つ。フリマアプリ、見てみよう」


二人はスマートフォンを取り出した。


marie_1985の出品ページ。そこにはまだ出品されていた。


「美咲の日記 - MD - 500円」

「最終記録 - 8mmフィルム - 500円」


「買おう」凛が言った。


「一気に?」美波が確認した。


「うん。時間がないから」


凛は両方ともカートに入れた。そして購入ボタンを押した。「ピッ、ピッ」という音。


「注文が確定しました」


画面に表示される。


発送予定日:本日

MD到着予定日:12月8日(月)

8mmフィルム到着予定日:12月9日(火)


「あと」凛が数えた。「2日と3日……それまでもつかな……」


美波が凛の手を握った。温かい手。生きている手。


「大丈夫。私がついてる。逆位相音で進行を遅らせる。そして5つ揃えたらすぐに上書き消去する」


凛は美波の目を見た。この人は本当に優しい。命を懸けて助けようとしてくれている。


「ありがとう、美波」


「当たり前でしょ」美波が微笑んだ。「友達だもん」

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