第97話「目覚めと決意」
「凛!」
美波が凛を揺さぶっていた。強く。肩を掴んで。
「起きて!」
凛は目を開けた。
自分の部屋。いつもの天井。白い天井。
夢だった。でもあまりにもリアルだった。父の顔。父の声。すべてがリアルだった。
「大丈夫……?」美波が心配そうに見る。
「うん……」凛が答えた。「夢見てた……防音室の……真理子と美咲とお父さんがいた……」
美波が凛の額に手を当てた。「熱い……微熱がある……」
凛は自分の額に触れた。確かに熱い。37.3度くらい? いや、もっとかもしれない。
「記録の影響……」美波が呟いた。「身体にも出始めてる……」
凛は起き上がった。頭が少しふらつく。でも大丈夫。まだ動ける。
「時間は?」凛が聞いた。
「午後3時」美波が答えた。「4時間寝てた」
「そんなに……」
凛は窓の外を見た。もう暗くなり始めている。12月。日が短い。冬至が近い。
「凛」美波が真剣な顔で言った。「このままじゃまずい。記録がどんどん進行してる。早く残りのメディアを集めないと」
凛は頷いた。「MDと8mmフィルム。あと2つ。フリマアプリ、見てみよう」
二人はスマートフォンを取り出した。
marie_1985の出品ページ。そこにはまだ出品されていた。
「美咲の日記 - MD - 500円」
「最終記録 - 8mmフィルム - 500円」
「買おう」凛が言った。
「一気に?」美波が確認した。
「うん。時間がないから」
凛は両方ともカートに入れた。そして購入ボタンを押した。「ピッ、ピッ」という音。
「注文が確定しました」
画面に表示される。
発送予定日:本日
MD到着予定日:12月8日(月)
8mmフィルム到着予定日:12月9日(火)
「あと」凛が数えた。「2日と3日……それまでもつかな……」
美波が凛の手を握った。温かい手。生きている手。
「大丈夫。私がついてる。逆位相音で進行を遅らせる。そして5つ揃えたらすぐに上書き消去する」
凛は美波の目を見た。この人は本当に優しい。命を懸けて助けようとしてくれている。
「ありがとう、美波」
「当たり前でしょ」美波が微笑んだ。「友達だもん」




