第84話「カセットテープの到着予定」
夜。
凛と美波は凛の部屋に戻った。
一日中フロッピーディスクの解析。疲れていた。目が疲れている。肩が凝っている。
でも、希望も見えた。
5つ集めれば上書き消去できる。元に戻れる。
「明後日――」
凛がカレンダーを見た。壁に掛かったカレンダー。
「12月6日。カセットテープが届く。それを見てどうなるか……」
美波が心配そうに見る。
「大丈夫」
凛が言った。
「逆位相音あるし、あなたがいるし。きっと大丈夫」
でも本当は不安だった。
VHSを見た時、あれだけ影響を受けた。
カセットテープはもっと強いかもしれない。感情の記録。聴覚の記録。
音だけで意識を侵食する。
「凛」
美波が言った。
「もし、もし何かあったら、すぐ止めるから。一人じゃないから」
「ありがとう」
凛が微笑んだ。
「美波がいてくれて、本当に良かった」
二人はしばらく話していた。
これからのこと。5つのメディアをどう集めるか。どうやって同時再生するか。
上書き消去が成功したら、どうするか。
話は尽きなかった。
そして午後11時。
美波が言った。
「そろそろ寝よう。明日も調査続けないと」
「うん」
二人はそれぞれ横になった。部屋の明かりを消す。
暗闇。静寂。
凛は目を閉じた。
でもすぐには眠れなかった。
頭の中でいろんなことが渦巻いている。
父。母。美月。美波。柳沢正臣。美咲。真理子。
そして73Hz。
すべてが繋がっている。見えない糸で。




