第82話「次のメディアを探して」
marie_1985の出品ページ。
そこには新しい出品が並んでいた。
「真理子の声 - カセットテープ - 500円」
「美咲の日記 - MD - 500円」
「最終記録 - 8mmフィルム - 500円」
すべてある。
「買おう」
凛が言った。
「でも――」
美波が躊躇した。
「一度に3つも? 大丈夫なの?」
「逆位相音あるし」
凛が答えた。
「それに、早く集めないと記録が進行しちゃう」
美波はしばらく考えて、そして頷いた。
「分かった。でも慎重にね。一つずつ確実に」
凛はまずカセットテープをカートに入れた。
「購入する」
ボタンを押す。「ピッ」という音。
「注文が確定しました」
発送予定日:本日 到着予定日:12月6日(土)
「MDと8mmフィルムは?」
美波が聞いた。
「カセットを見てから」
凛が答えた。
「一つずつ確実に」
「そうだね」
美波が同意した。
二人は他のファイルも確認した。
「SUBJECT_LIST.xls」
被験者のリスト。
美波がそれを開いた。Excelファイル。表が表示される。
No. | 名前 | 年齢 | 実験日 | メディア | 状態 001 |
柳沢真理子 | 42 | 1998.11.15 | VHS,カセット,8mm | 不完全 002 |
柳沢美咲 | 14 | 1999.12.03 | VHS,カセット,MD,FD,8mm | 完全 003 |
佐々木隆 | 25 | 1999.12.03 | VHS,カセット,MD,FD,8mm | 完全 004-020 |
[その他の被験者] | - | 1997-1999 | 各種 | 様々
凛は父の名前を見つけた。
「お父さん……完全って書いてある……」
美波がその行を指差した。
「5つすべてで記録されてる……ということは、お父さんの記録も5つある? marie_1985の出品にあるかもしれない」
二人は再び出品リストを確認した。
すると――見つかった。
「隆の記録 - VHSテープ - 500円」
「隆の告白 - カセットテープ - 500円」
「隆の思考 - フロッピーディスク - 500円」
父の記録。すべてが出品されている。
「これ……」
凛が震えた声で言った。
「お父さんの記録……」
「買う?」
美波が聞いた。
凛は迷った。父の記録を見たい。でも、それは危険かもしれない。
「今はやめとく」
凛が決めた。
「まず自分の記録を完成させて、上書き消去の方法を見つける。それから、お父さんのことを考える」
美波は頷いた。
「そうだね。それが賢明」




