第81話「解析開始」
午前11時。
大学の情報工学科。資料室。
そこには古いパソコンが並んでいた。博物館のように。
1990年代の機種。Windows 95、98、Me。
そしてフロッピーディスクドライブ付き。
「あった!」
美波が言った。
彼女はWindows 98のマシンを起動した。
ブーーーンという懐かしい起動音。ハードディスクの回転音。
そして青い画面。デスクトップが表示される。Windowsロゴ。
「フロッピー、入れてみて」
凛がディスクを挿入した。
ガチャッ。
ドライブがディスクを読み込む。
ガリガリガリ……
機械的な音。磁気ヘッドが動く音。
そして画面にアイコンが表示された。
「3.5インチFD(A:)」
美波がそれをダブルクリックした。「カチカチ」という音。
フォルダが開く。
中には複数のファイル。
「RESEARCH_073.txt」
「SUBJECT_LIST.xls」
「BRAINWAVE_DATA.dat」
「INSTRUCTION.txt」
「たくさんある……」
美波が呟いた。
「まず、INSTRUCTION.txtから見よう」
彼女がファイルを開いた。テキストエディタで内容が表示される。
『PROJECT MNEMOSYNE - 記録の完成について
このデータを見ているあなたへ。
おめでとう。あなたは第一段階を完了しました。VHSテープによる視覚野の記録。
しかし、これだけでは不完全です。完全な意識の記録には、5つのメディアが必要です。
VHSテープ - 視覚野の記録(完了)
カセットテープ - 聴覚野と感情の記録
MD - 感情の微細な変化の記録
フロッピーディスク - 論理的思考の記録(今ここ)
8mmフィルム - 深層記憶の記録
5つすべてを集めた時――あなたは完全な記録を手に入れます。
そして――上書き消去により――元の状態への復元が可能となります。
記録された意識を消去できます。元のあなたに戻れます。
すべてのメディアを集めてください。そして、同時に再生してください。
そこに解放があります。
柳沢正臣』
凛と美波は顔を見合わせた。
「上書き消去……」
凛が呟いた。
「やっぱり、5つ集めれば元に戻れるんだ……」
美波も希望に目を輝かせた。
「そうだよ! 私たちが考えてた通り! 5つ集めて同時に再生すれば、記録を消去できる! 凛を助けられる!」
凛は胸が熱くなった。
希望。本当の希望。
「残りは――」
凛が数えた。
「カセットテープ、MD、8mmフィルム。3つ」
「探そう」
美波が言った。
「marie_1985の出品リスト、確認しよう」
二人はスマートフォンを取り出した。




