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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第三章「侵食の始まり」
78/132

第77話「記録された人々の行動」

凛と美波はさらに調査を続けた。


記録された人々がどんな行動を取っているのか。


SNSの投稿から、パターンが見えてきた。


第一段階:視聴直後


購入者はVHSを見た直後、SNSに投稿する。


「素晴らしい体験でした」

「人生が変わりました」

「幸せです」


そして必ず「73」を付ける。


第二段階:布教活動


数日後、彼らは友人に勧め始める。


「あなたも見るべき」

「絶対に後悔しない」

「人生が変わるよ」


そしてフリマアプリで自分も出品を始める。


第三段階:集会


1週間後、オフ会を開催する。必ず73人単位で。


そこで新しいメディアを交換する。VHS、カセット、MD、フロッピー、8mmフィルム。


すべてを集めようとする。


第四段階:完全な記録


5つすべてを手に入れた人は投稿が変わる。


「完成しました」

「私は永遠になりました」

「もう私ではありません」

「私たちです」


そしてその後、投稿が止まる。完全に個が消える。


「怖い……」


凛が呟いた。


「第四段階まで行った人、どうなるの?」


美波が該当するユーザーを探した。5つすべてを集めたと投稿している人。


何人か見つかった。そして彼らの最後の投稿を見た。


ユーザー名:hiroshi_1987


最後の投稿:11月25日


「5つすべて揃いました。今から同時再生します。さようなら、私。こんにちは、私たち。73」


その後、投稿なし。アカウントも削除されていた。


ユーザー名:ayaka_1999


最後の投稿:11月28日


「完成。私は消えます。でも消えません。みんなの中で生き続けます。73」


その後、投稿なし。こちらもアカウント削除。


「みんな――」


美波が震えた声で言った。


「アカウント消してる……なぜ?」


「たぶん――」


凛が答えた。


「もう必要ないから。個人として存在しなくなったから。SNSも必要ない。自我が消えたから」


美波はゾッとした。背筋に冷たいものが走る。


「じゃあ、彼らは今、どこに? 何してる?」


凛は分からなかった。


でも、一つだけ確かなことがある。


彼らはもう彼らじゃない。


画面の向こうで、何千、何万という人々が個を失い、集合意識の一部になっている。


そしてその数は、今この瞬間も増え続けている。


部屋は静かだった。だが、その静寂は重く、不吉だった。

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