第76話「SNSの異変」
12月3日 水曜日
凛は授業をサボった。研究室にも行かなかった。
部屋に引きこもった。美波と一緒に。
二人でひたすら調査を続けた。
SNS。フリマアプリ。ネットのあらゆる場所。
73という数字を探し続けた。
そして気づいた。
Xでハッシュタグ「#73」がトレンド入りしていた。
凛はそのハッシュタグを開いた。「タップ」という音。
無数の投稿。画面をスクロールしても終わらない。
「#73 幸せです」
「#73 一人じゃない」
「#73 みんなと繋がってる」
「#73 記録された」
「#73 永遠になった」
すべての投稿が同じような内容。
そして、投稿者たちのプロフィール写真。みんな同じような微笑み。虚ろな目。
「これ……」
美波が呟いた。
「もう隠れてない……堂々と公開してる……」
凛も気づいた。
最初はフリマアプリだけだった。密かに広がっていた。
でも今はSNSで公然と。隠す必要がなくなった。
それだけ数が増えた。もう隠しきれないほどに。
「投稿数見て」
美波が言った。
「#73、24時間で3万件以上」
「3万……」
凛が呆然とした。声が出ない。
「そんなに……」
「そして――」
美波がスクロールを続けた。
「海外からも投稿されてる。英語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語……」
「世界中……」
凛が呟いた。
「もう世界中に広がってる……」
美波は英語の投稿を開いた。
"I'm so happy. I'm not alone anymore. 73""We are one. We are 73. Join us""The recording is complete. I am eternal. 73"
どれも同じような内容。そして最後に必ず73。
「凛」
美波が真剣な顔で言った。
「これは、もう個人で対処できるレベルじゃない。世界的な現象になってる」
「どうすれば――」
凛が言った。
「警察? 政府? でも信じてもらえる? VHSテープで意識が記録されるなんて」
美波は首を振った。
「無理だね。オカルトだって笑われるだけ」
「じゃあ――」
「だから」
美波が言った。
「私たちがやるしかない。5つのメディアを集めて、上書き消去の方法を見つけて、そして世界中に広める。その方法を」
凛は美波の目を見た。
この人は本気だ。世界を救おうとしている。たった二人で。
無謀? きっとそう。
でも、他に方法がない。
「やろう」
凛が言った。
「二人で世界を救おう」
美波が微笑んだ。
「うん」
二人は拳を合わせた。「タン」という音。




