表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第三章「侵食の始まり」
73/130

第72話「感染の拡大」

凛と美波はさらに調査を続けた。


購入者のSNS。そこから辿れる友人関係。


すると――驚くべきことが分かった。


購入者たちは現実世界でも繋がり始めていた。


12月1日。東京・渋谷。


kana_1992の投稿:


「今日、オフ会しました。みんな素敵な人たちでした。73人集まりました。73 #オフ会 #記録仲間」


写真には73人の人々。


全員が同じような微笑み。同じような虚ろな目。


そして全員が手に持っている。


VHSテープ。カセットテープ。MD。フロッピーディスク。8mmフィルム。


さまざまな記録メディア。まるで宝物のように。


「73人……」


凛が呟いた。


「また、この数字……」


美波が拡大写真を見た。そして気づいた。


「凛、これ見て」


「何?」


「この人たち、みんな同じ服装してる」


確かに――全員が白いシャツ、黒いパンツ。まるで制服のように。


「それに立ち位置も規則的。7列×11列……」


「7×11=77?」


「いや、待って」


美波が数え直した。指で画面をなぞる。


「73人。素数だ……これ、偶然じゃない。意図的に73人集めてる」


凛の背筋が凍りついた。


73という数字に支配されている。


心拍数。購入者の数。集会の人数。


すべてが73。


「他の都市も調べよう」


美波が言った。


二人は位置情報を頼りに日本各地の投稿を探した。


大阪。名古屋。福岡。札幌。


すべての主要都市で同じようなオフ会が開かれていた。


そして必ず73人。


「全国で――」


美波が計算した。


「主要都市10ヶ所として、73×10=730人。でも評価は127件。矛盾してる……」


「いや」


凛が気づいた。


「評価してない人もいるんだ。購入しても評価しない人。そう考えると、実際の購入者はもっと多い」


美波がフリマアプリの統計を見た。


「marie_1985の総販売数……」


彼女の顔が真っ青になった。声が震える。


「1,825個……」


「え?」


「VHS、カセット、MD、フロッピー、8mmフィルム。5種類×365個ずつ」


「365……」


凛が呟いた。


「1年の日数……1日1個ずつ、1年間売り続けたら、この数になる」


「でも――」


美波が登録日を確認した。


「marie_1985の登録日、2024年11月1日。まだ1ヶ月しか経ってない……なのに1,825個? 1日60個以上? そんなの一人じゃ無理……」


二人は顔を見合わせた。


marie_1985は一人じゃない。


複数人。いや、もっと多くの人が同じアカウントで出品している。


記録された人たちがみんなで記録を広げている。


組織的に。計画的に。


感染は加速していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ