第71話「購入者の追跡」
「ねえ、美波」
凛が言った。
「marie_1985から買った人、追跡できないかな」
「追跡?」
「うん。この人たちが今どうなってるか、知りたい」
美波は少し考えて、そして言った。
「できるかも。フリマアプリって購入者のプロフィール見れるでしょ。そこからSNSとかたどれるかも」
「やってみよう」
二人は評価コメントを一つずつ見ていった。
最初のコメント。
ユーザー名:kana_1992
「素晴らしい商品です。73」
このユーザーのプロフィールを開く。
自己紹介文:「レトロメディア愛好家。音楽と記録が好き。73」
出品リスト:
「記録されたカセットテープ - 500円」
「母の声 - MD - 500円」
「思考の断片 - フロッピー - 500円」
すべて――marie_1985と同じタイトル。同じ価格。
「この人も出品してる……記録を広げてる……」
美波がさらに調べる。
「SNS、リンクしてる」
彼女はkana_1992のInstagramを開いた。
そこには写真が並んでいた。
最近の投稿。12月1日。
自撮り写真。30代くらいの女性。笑顔。
でも――その目がどこか虚ろ。焦点が合っていないような。
キャプション:
「最近、とても幸せです。一人じゃなくなりました。みんなと繋がっています。73 #幸福 #記録 #73Hz」
コメント欄:
「私も!73」
「同じです!73」
「幸せですね!73」
すべてのコメントに73。
「これ……」
美波が震えた声で言った。
「もう、手遅れかもしれない……」
凛は次の投稿を見た。
11月30日。
VHSテープの写真。
キャプション:
「届きました。これから見ます。楽しみ」
そして、12月1日。変わった。完全に人格が変わった。
たった一日で。
「VHSを見て、一日でこうなった……」
二人は他のユーザーも調べた。
takeshi_1988 yuki_1995 miho_2000
すべて同じパターン。
VHSを購入。視聴。そして人格が変わる。
SNSの投稿が変わる。すべてに「73」が現れる。
そして、自分も出品者になる。記録を広げ始める。
「ネズミ講だ……」
美波が呟いた。
「いや――これは感染だ」




