第70話「フロッピーディスクの購入」
凛は迷わず購入ボタンを押した。指が画面をタップする。
「注文が確定しました」
画面に表示される。
発送予定日:本日
到着予定日:12月4日(木)
あと2日。
「早いね」
美波が言った。
「marie_1985、いつもすぐ発送してくる。まるで待ってたかのように」
凛もそれを感じていた。
このアカウントは何者なのか。
柳沢正臣? いや、彼は死んでいる。では誰?
「評価、見てみよう」
美波が提案した。
二人はmarie_1985の評価ページを開いた。
評価数:127件
すべて★5。
そして――コメント欄。
「素晴らしい商品です。73」
「人生が変わりました。73」
「幸せになれました。73」
「もう一人じゃない。73」
「73」
「73」
「73」
すべてにこの数字。異様な統一感。
「増えてる……」
凛が呟いた。
「前は73件だったのに、今は127件。1日で50件以上増えてる」
美波の顔が青ざめた。
「これって――毎日50人以上が記録されてるってこと?」
凛はゾッとした。背筋が凍る。
広がっている。確実に記録は拡散している。
フリマアプリを通じて。デジタルの海を通じて。世界中に。
「凛」
美波が真剣な顔で言った。
「私たちだけじゃ、もう止められないかも」
「でも――」
凛が言った。
「だからこそ、5つ集めて方法を見つけなきゃ。記録を消去する方法を。そして、みんなを助ける」
美波はしばらく考えて、そして頷いた。
「そうだね。やろう。一緒に」
二人は拳を合わせた。「タン」という音。
決意を新たに。




