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第66話「変化の兆し」
12月2日 火曜日 午前8時
凛はいつもより早く目が覚めた。
ベッドの隣では美波がまだ眠っている。穏やかな寝息。規則正しい呼吸音。
凛はそっと起き上がった。ベッドがきしむ音を立てないように、ゆっくりと。
窓を開ける。
冷たい空気が部屋に流れ込んでくる。肌を刺すような冷たさ。12月の朝。空は灰色。
でも――凛の心は晴れやかだった。
昨夜、逆位相音で73Hzの影響を防げた。心拍数も正常に戻った。
記録から解放された。
凛は洗面所に向かった。裸足で歩く。床が冷たい。
顔を洗う。蛇口をひねる。「ジャー」という水音。
冷たい水が肌に気持ちいい。目が覚める。
タオルで顔を拭く。そして、鏡を見る。
自分の顔。いつもの顔。
でも――何かが違う。
目の色? いや、変わっていない。黒い瞳。
肌の色? これも同じ。青白い肌。
でも――何か、奥の方で変化が起きている気がした。
まるで、自分の顔なのに、自分の顔じゃないような。微かな違和感。
凛は首を振った。鏡の中の自分も首を振る。
気のせいだ。疲れているだけ。
昨夜はほとんど眠れなかった。VHSテープを見て、父の声を聞いて、たくさん泣いて。
だから疲れているんだ。
凛は洗面所を出て、キッチンに向かった。
朝食を作ろう。美波のためにも。




