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第61話「美波の名前」
しばらくして、凛が落ち着いてきた。
涙を拭く。目が腫れている。
そして――気づいた。
「ねえ、美波」
「うん?」
「お父さんの手紙に、あなたの名前があった」
美波が驚いた顔をした。
「え?」
凛はもう一度手紙を読んだ。
「『美波さんを頼りなさい』って書いてある」
美波は信じられない、という顔をした。目を見開いている。
「でも――お父さん、私のこと知らないはずだよ。10年前に失踪したんでしょ? その時私、まだ小学生だったし。凛とも会ってなかった」
二人は顔を見合わせた。
これはどういうこと?
なぜ父は美波の名前を知っていた?
「もしかして――」
美波が呟いた。
「予知? 記録された意識って、未来が見えるの?」
凛は分からなかった。
でも、一つ確かなことがある。
父は美波のことを知っていた。そして、娘を託した。
この人に――凛を守ってほしいと。
「美波」
凛が言った。
「何?」
「ありがとう。お父さんの代わりに、私を守ってくれて」
美波が優しく微笑んだ。
「当たり前でしょ。私たち友達だもん」
「それに――」
美波がノートパソコンを見た。画面には完成に近いデータが表示されている。
「もうすぐ完成する。逆位相音の生成。これができたら、凛を守れる。73Hzから」




