第57話「謎の手紙」
凛はその紙をじっと見つめた。
「母に、聞きなさい。すべてを」
誰がこんな手紙を? なぜ?
筆跡は丁寧だが、どこか震えている。書いた人が何かを恐れていたかのような。
美波が凛の肩越しに紙を見た。
「お母さんに……?」
「うん……」
凛は困惑していた。
母はあの実験のことを知っているはず。研究助手だったのだから。
でも、一度も話してくれなかった。父のことも、実験のことも。すべてを隠していた。
「凛」
美波が言った。
「これ――お母さんに電話してみたら?」
凛は迷った。
母に聞く。すべてを。
でも――怖い。
何を言われるか。何を知ってしまうか。それが怖い。
でも、もう引き返せない。ここまで来たら、知るしかない。真実を。
凛はスマートフォンを手に取った。手が少し震えている。
連絡先から「母」を選ぶ。
発信ボタンに指を置く。深呼吸。
そして――押した。
プルルルル……
コール音。一回、二回、三回。
「もしもし」
母の声。久しぶりに聞く声。
最後に話したのは――いつだっけ? 半年前?
「お母さん」
凛が言った。声が少し上ずっている。
「凛? どうしたの、こんな時間に」
母の声は少し驚いている。
でも同時に――何か予期していたような、そんな響きもあった。
「お母さん――」
凛は言葉を選んだ。
「聞きたいことがあるの」
沈黙。数秒間。電話の向こうで息を呑む音が聞こえた気がした。
そして――母が言った。
「……そう。ついに、この日が来たのね」




