第53話「二つの記録の融合」
画面が再び切り替わった。
美咲の部屋。彼女の演奏が終わろうとしていた。
最後の和音。両手が鍵盤を叩く。音が部屋に響き渡る。
そして――正臣の声。
「実験73号、意識転写を開始する」
ブゥゥゥゥン――
低い唸り声。部屋全体が振動している。壁が、床が、天井が、すべてが震えている。
美咲の身体が痙攣し始めた。椅子から転げ落ちそうになる。だが、体は椅子に固定されているかのように動かない。
そして――画面がまた切り替わる。
隆の部屋。彼も同じように痙攣している。
二つの実験が同時に行われている。美咲と隆。ピアノと声。
二つの方法で、だが同じ目的。意識の記録。そして転写。
画面が分割された。
左半分に美咲。右半分に隆。
二人とも苦しんでいる。口が開き、無音の悲鳴。目が見開かれ、瞳孔が散大している。
でも止められない。記録は続く。
凛と美波は息を詰めて見つめていた。
美波のノートパソコン。波形が激しく乱れている。赤いピークが画面を埋め尽くしている。
「73Hzが――」
美波が呟いた。
「どんどん強くなってる……このままじゃ――」
でも止められない。凛も美波も画面から目が離せない。
まるで金縛りにあったように。
そして――二人とも同時に崩れ落ちた。
美咲がピアノから。隆が椅子から。
床に倒れる音。「ドサッ」という鈍い音。
心拍計の音が鳴る。
ピーーーーーー……
フラットライン。
二人とも心臓が止まった。
だが、正臣の声は冷静だった。感情のかけらもない。
「記録完了。二つの完璧な記録。これで――美咲も隆も――永遠になった」
画面が暗転した。砂嵐に戻る。
シャーーーーー……
だが、その音の中に、まだ何か聞こえる気がした。
呼吸? ピアノの音? それとも――




