第48話「美咲の姿」
14歳くらいの少女。
白いワンピースを着た、痩せた少女。
髪は長く真っ黒で、顔の両側に垂れ下がっている。
顔は青白い。まるで陶器のように。血の気が完全に失せている。
唇は薄紫色。チアノーゼの色。
病気だ。この子は重い病気なんだ。一目で分かった。
そして――目。
その目だけは生きていた。いや、生きているというより――燃えていた。
諦観と執着が混ざり合った、異様な光。死を目前にした者だけが持つ、透明な輝き。
少女はじっとピアノの前に座っている。動かない。まるで人形のように。
だが時々、かすかに震えている。恐怖で。
彼女の頭には電極が貼り付けられている。7つの電極。銀色の円盤。
そこから伸びるケーブルが、壁際の機械へと繋がっている。
画面の隅にタイムコードが表示された。
「1999.12.3 23:47」
1999年12月3日金曜日午後11時47分。
26年前のあの夜。
「美咲……」
凛が呟いた。
「これが、美咲……」
美波も息を詰めて見つめている。
ノートパソコンの画面には音声波形が表示されている。まだ特に異常な周波数は検出されていない。
だが、これから何かが起こる。
そして――声が聞こえてきた。
スピーカーから。低い男の声。
「準備はいいかい、美咲」
凛の全身が凍りついた。
この声――知っている。
遠い記憶の奥底。幼い頃、聞いたことがある声。
「お父さん……?」
凛が震える声で呟いた。
美波が驚いて凛を見る。
「え? 今の声が?」
「違う……」
凛は首を振った。
「今のは柳沢正臣。美咲の父親」
だが――この声の響き、イントネーション、どこか父に似ている気がする。
画面の中の美咲がか細い声で答えた。
「……はい」
その声はほとんど聞こえないくらい小さかった。だが、マイクが拾っている。
高性能なマイクが彼女の震える声をすべて記録している。




