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第47話「最初の音」
最初に聞こえてきたのは呼吸だった。
誰かの呼吸。浅く、速く、不規則な。怯えている人の呼吸。
そして――その呼吸が、凛の呼吸と同期していく。
気づけば凛も同じリズムで呼吸していた。まるで画面の中の人物と一体化しているかのように。
「凛……」
美波が心配そうに見る。
「大丈夫?」
凛は頷いた。でも、本当は大丈夫ではない。
何かがおかしい。身体が、自分のものではないような感覚。
画面に光が現れた。薄暗い黄色い光。白熱電球の光。
その光の中に、部屋が浮かび上がってくる。
壁。グレーの波打った壁。吸音材。
凛が夢で見た――あの防音室。
「これ……」
美波が息を呑んだ。
「本物の防音室だ……」
カメラがゆっくりとパンする。部屋の全体像が見えてくる。
6畳ほどの小さな部屋。だが壁の厚さのせいで、実際の空間はもっと狭く感じる。圧迫感がある。
そして――部屋の中央にグランドピアノ。
黒い巨大な楽器。Steinway & Sons。
無数のケーブルが絡みついている。マイクが取り付けられている。センサーが貼り付けられている。
これはもう楽器ではない。実験装置だ。
「すごい……」
美波が呟いた。
「本当に実験してたんだ……」
凛は黙って画面を見つめていた。心臓が激しく鳴っている。
ドクンドクンドクンドクン――
カメラがピアノの前を捉えた。
そこに――少女が座っていた。




