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第46話「再生前の準備」

テープが完全に挿入された。


ビデオデッキの表示が変わる。


「PLAY」


準備完了。あとは再生ボタンを押すだけ。


でも――凛は躊躇した。


本当に見ていいのか。この先に何があるのか。


美波が凛の肩に手を置いた。その手は温かい。生きている人間の温もり。


「大丈夫。私がここにいるから。何かあったら、すぐ止める」


凛は頷いた。


「ありがとう」


美波がノートパソコンを取り出した。MacBook Air。画面を開く。


「これで音声を録音する。そして後で解析する。73Hzの信号が本当にあるか確認する」


美波はテレビの前に小型のマイクを設置した。コンデンサーマイク。プロ用の機材。


そしてノートパソコンの音声入力に接続する。USB端子。


「録音開始」


美波がソフトウェアを操作する。画面に波形が表示され始めた。リアルタイムで音を記録している。


緑色の波形が左から右へ流れていく。


「準備できた。いつでもいいよ」


美波が言った。


凛は深呼吸をした。一度、二度、三度。


心臓が早く鳴っている。ドクンドクンドクン。


でも、もう引き返せない。ここまで来たら、見るしかない。


凛はリモコンを手に取った。古いリモコン。ボタンが黄ばんでいる。


そして、再生ボタンに指を置いた。


「行くよ」


凛が呟いた。


「うん」


美波が頷いた。


凛はボタンを押した。


カチッ。


その瞬間――


部屋の空気が変わった。


温度が下がった。いや、下がっただけではない。


何か本質的な何かが変わった。


時間の流れ。空間の質。現実の密度。


すべてが歪み始めた。


画面が変化し始めた。砂嵐が徐々に消えていく。


そして――暗闇。


真っ黒な画面。


だが、その黒はただの黒ではない。奥行きがある。まるで本当に深い闇が、画面の向こうに広がっているような。


凛と美波は息を詰めて画面を見つめた。


そして――音が聞こえ始めた。

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