第41話「日曜日の朝」
2025年11月30日 日曜日 午前9時
凛は目が覚めた。
目覚まし時計はセットしていない。だが、自然に目が覚めた。身体が、この日を待っていたかのように。
今日――VHSテープが届く日。
凛はベッドから起き上がった。身体が重い。昨夜はほとんど眠れなかった。悪夢と、あの低い音に悩まされ続けた。
窓の外を見る。
曇り空。灰色の雲が低く垂れ込めている。だが、雨は降っていない。配達には支障ない。
凛はスマートフォンを確認した。画面を点灯させる。眩しい。
配送状況を開く。
「本日配達予定」
「配達時間:午前中」
もうすぐ。あと数時間で届く。
凛の心臓が早く鳴り始めた。緊張、期待、そして恐怖。すべてが混ざり合っている。
凛は洗面所に行った。顔を洗う。冷たい水が顔にかかる。少し目が覚める。
鏡を見る。顔色が悪い。目の下のクマが濃い。まるで病人のよう。
歯を磨く。髪を整える。服を着替える。いつもより丁寧に。
そして――なぜか部屋を片付け始めた。
床に散らばっている服を拾う。洗濯カゴに入れる。
机の上の空のペットボトルを集める。ゴミ袋に入れる。
シンクに溜まった食器を洗う。冷たい水が手を刺す。洗剤の泡が立つ。
なぜ片付けているのか、自分でも分からない。
でも――何か特別なものを迎えるような、そんな気持ちだった。
儀式のように。
30分かけて、部屋がきれいになった。いつもよりずっと。床が見える。机が片付いている。
凛はソファに座った。そして――待った。
インターホンが鳴るのを。
時計を見る。午前9時27分。
配達は午前中。あと2時間以上ある。
長い。この待ち時間が、異様に長く感じる。
凛はスマートフォンを取り出した。SNSを開く。だが、見る気になれない。
フリマアプリを開く。marie_1985のページを見る。
評価は相変わらず73件。すべて★5。すべてのコメントに「73」。
凛はアプリを閉じた。
そして、ただ待った。




