表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第一章「フリマアプリの誘惑」
39/143

第38話「目覚め」

午前3時27分。


凛は汗びっしょりで目覚めた。


パジャマが肌に張り付いている。背中、脇の下、額、すべてが濡れている。冷たい汗。


心臓が激しく鳴っている。ドクンドクンドクン――まるで胸から飛び出しそうなほど。


呼吸が荒い。肺が空気を求めている。口が乾いている。


夢。ただの夢。


でも――妙にリアルだった。


ピアノの鍵盤の冷たさ、防音室の匂い、父の声。すべてが生々しかった。


凛は自分の心拍を測ってみた。


手首に指を当てる。橈骨動脈。血液が流れる感触。


ドクン…ドクン…ドクン…


数える。15秒で18回。


つまり――1分で72回。


いや――正確には73回。


凛の血が凍りついた。


73。また、この数字。


偶然? それとも――


凛はベッドから起き上がった。喉が渇いている。砂漠のように。


キッチンに行く。裸足の足が冷たいフローリングに触れる。


水を飲む。グラスに水道水を注ぐ。一気に飲み干す。


でも、喉の渇きが癒えない。


もう一杯。また一杯。


3杯飲んで、ようやく落ち着いた。胃が重い。


凛は窓の外を見た。


真っ暗。街灯だけがぼんやりと光っている。オレンジ色の光が、路面を照らしている。


静かな夜。午前3時。世界が眠っている時間。


でも――凛の耳には何か聞こえる気がした。


低い音。


ブーーーーーン……


また、あの音。


凛は耳を塞いだ。両手で耳を覆う。


でも、音は消えない。


頭の中から聞こえている。骨伝導のように。いや、それ以上に直接的に。まるで脳そのものが振動しているかのように。


これは幻聴? それとも本当に聞こえているのか?


凛は部屋に戻った。ベッドに横になる。


でも――もう眠れない。


目を閉じると、また夢を見そうで怖い。あの防音室、あのピアノ、あの声。


凛はスマートフォンを手に取った。時間を潰すため。


SNSを開く。でも、この時間は誰も投稿していない。タイムラインは静止している。


凛はフリマアプリを開いた。


配送状況を確認する。


「配送中」

「現在地:○○配送センター」


変わっていない。


明日――このアパートの近くまで来る。


そして――明後日。日曜日。届く。


あと48時間。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ