表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第一章「フリマアプリの誘惑」
35/152

第34話「午後の講義」

午後1時。3限の講義。社会学。


凛は教室にいたが、講義の内容が全く頭に入ってこなかった。


教授の声は聞こえる。スライドも見える。だが、その意味が理解できない。


ノートに適当にメモを取る。ペンが紙の上を滑る。インクが線を描く。


でも、何を書いているのか自分でも分からない。


頭の中はVHSテープのことでいっぱい。


あと2日で届く。そして、見る。


何が記録されているのか。 父の声はあるのか。 そして本当に、意識が転写されるのか。


怖い。でも、知りたい。


その矛盾した感情が、凛の心を揺さぶっていた。


授業が終わった。午後2時30分。今日の授業はこれで終わり。


凛はそのまま帰ることにした。


大学を出る。銀杏並木を通る。黄色い葉が風に舞う。


駅に向かう。改札を通る。ホームで電車を待つ。


帰路。いつもと同じ。


でも――今日は何かが違う。


空気が重い。周りの人たちが遠く感じる。


まるで自分だけが、別の世界にいるような。


凛はイヤホンをつけた。音楽を聴く。


でも――今日は音楽の中に、何か別の音が混ざっている気がした。


低い音。


ブーーーーーン……


また、あの音。


凛は音量を上げた。でも、その音は消えない。


むしろ、大きくなっている気がする。


凛はイヤホンを外した。


でも――音はまだ聞こえる。


耳の中から。頭の中から。骨伝導のように、頭蓋骨を震わせて。


これは―― 幻聴? それとも―― 本当に―― 聞こえて―― いる?


73Hz。


記録された周波数が、時空を超えて伝播している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ