表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第一章「フリマアプリの誘惑」
24/45

第23話「昨夜の記憶」

着替えながら、凛は昨夜のことを思い出していた。


フリマアプリ。あのVHSテープ。「呪い」というラベル。


なぜ買ったんだろう。自分でも分からない。ただ――何かに引き寄せられた。見たこともないのに、懐かしい気がした。


購入ボタンを押した瞬間のことを、鮮明に覚えている。


「注文が確定しました」


その瞬間――部屋の空気が変わった気がした。


温度が下がった。いや、気のせいかもしれない。でも確かに、何かが変わった。まるで、何かが部屋に入ってきたかのような。


凛はスマートフォンでフリマアプリを開いた。購入履歴を確認する。


「記録されたビデオテープ」 出品者:marie_1985 価格:500円 発送予定日:本日 到着予定日:11月30日(日)


あと2日。2日後には、このテープが届く。


だが――問題がある。


再生する機械がない。


VHSデッキ。ブラウン管テレビ。どちらも持っていない。凛が生まれたのは2004年。その頃にはすでに、DVDが主流になっていた。VHSなんて、博物館の展示品でしか見たことがない。


どうやって再生すればいいんだろう?


誰かに借りる? でも――誰に?


友達? いや、そんなに親しい友達はいない。


先輩? 大学の先輩なら、実家に古い機械があるかもしれない。


凛はLINEを開いた。連絡先をスクロールする。同じクラスの人たち。サークルの人たち。


でも――誰にも頼めない。


「VHSデッキ、貸してください」


そんなこと、急に言えない。変な人だと思われる。


凛はため息をついた。鏡に映る自分の顔を見る。疲れている。目の下にクマができている。髪も、もう3週間は美容院に行っていない。毛先が傷んでいる。


考えても仕方ない。とりあえず、テープが届いてから考えよう。


凛は部屋を出た。大学に向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ