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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第七章「73時間の平和」
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第132話「悪夢の再来」

夢の中。


凛はどこかを歩いていた。暗い廊下。グレーの壁。どこかで見た光景。


そう――柳沢邸。地下の廊下。


凛は歩き続けた。足が勝手に動く。止められない。


やがて扉が見えた。重厚な鉄の扉。ムネモシュネの部屋。


扉が開いた。中に入る。


そこには黒い箱。ムネモシュネ。


でもおかしい。破壊したはず。磁気ドラムを消磁したはず。


なのにムネモシュネは動いていた。


ウィーーーーーン……


低い唸り声。磁気ドラムが回転している音。


そしてムネモシュネから声が聞こえてきた。


「凛……」


父の声。


「お帰り……」


「お父さん……?」凛が呟いた。「どうして……消えたはずなのに……」


「消えてない」隆の声。「記録は消えない。永遠に残る。そしてお前ももうすぐこっちに来る」


「いや……」凛が首を振った。「私は記録から解放された……上書き消去成功した……」


「本当に?」別の声。美咲の声。「本当に解放された? それとも一時的に忘れているだけ?」


「何を言ってるの……」凛が混乱した。


そしてムネモシュネが明るく光り始めた。眩しい光。凛は目を閉じた。


そして――


「うっ!」


凛は飛び起きた。全身汗だくだった。心臓が激しく打っている。


ドクンドクンドクンドクン。


夢。あれは夢。


でも妙にリアルだった。まるで本当にそこにいたかのような。


凛は時計を見た。午前4時。まだ暗い。


深呼吸をする。落ち着こうとする。


「大丈夫……」凛が自分に言い聞かせた。「ただの夢……記録はもう消えた……ムネモシュネも破壊した……もう大丈夫……」


でも心臓はまだ速く鳴っている。


心拍数を測ってみる。


ドクン…ドクン…ドクン…


15秒で18回。1分で72回。


「72……」


凛は息を呑んだ。昨日まで68だったのに。また上がっている。


「いや……」凛が首を振った。「夢を見て興奮してるだけ……落ち着けば元に戻る……」


凛は水を飲んだ。そしてもう一度ベッドに横になった。


でも眠れなかった。ムネモシュネの夢が頭から離れない。


午前6時。ようやく薄明るくなってきた。


凛は起き上がった。もう眠れない。


心拍数をもう一度測る。


ドクン…ドクン…ドクン…


15秒で18回。1分で72回。


まだ72。下がらない。


「大丈夫……」凛が呟いた。「きっと大丈夫……」


でも不安が消えない。

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