第125話「母との相談」
凛はすぐに母に電話をかけた。
「もしもし、お母さん」
「凛? どうしたの?」香織の声。
「話があるの。今から会えない?」
30分後。三人は大学近くのカフェで会った。香織、凛、美波。
凛は論文のコピーを見せながら説明した。分散型システム。73時間ごとの同期。そして自分が核であること。
香織は真剣に聞いていた。そして論文を読み終えると深いため息をついた。
「正臣は……本当に恐ろしいものを作ったのね……」
「お母さん」凛が言った。「私を昏睡状態にして。73時間ごとに。3回。そうすれば同期を防げる」
香織は娘を見た。心配そうな目。「凛……危険よ。何度も鎮静剤を使うなんて……」
「でも他に方法がない」凛が答えた。「10万人以上の人を救うために。そして記録を完全に消すために」
香織はしばらく黙っていた。そして田中教授のことを思い出した。
「田中教授……母の同僚で麻酔科医。彼なら安全に鎮静と覚醒をコントロールできる」
「お願い」凛が懇願した。「お母さん、田中教授に頼んで」
香織は娘の目を見た。その目には強い決意があった。
「分かった……」香織が頷いた。「今すぐ田中教授に連絡する」
香織は電話をかけた。田中教授と話す。状況を説明する。
「はい……はい……ありがとうございます……では今夜……」
電話を切った。
「田中教授が協力してくれる。今夜から始める。第一回同期の前に」
凛は安堵のため息をついた。「ありがとう、お母さん」
「でも」香織が真剣に言った。「これは危険な賭けよ。3回も昏睡状態にする。何が起こるか分からない」
「分かってる」凛が答えた。「でもやらなきゃいけない」
美波が凛の手を握った。「私もずっと側にいる。一緒に乗り越えよう」
三人は計画を立てた。
第一回同期:12月13日 21:15→ 12月13日 20:00に鎮静開始、22:00に覚醒
第二回同期:12月16日 22:15→ 12月16日 21:00に鎮静開始、23:00に覚醒
第三回同期:12月19日 23:15→ 12月19日 22:00に鎮静開始、24:00に覚醒
「これで」香織が言った。「3回すべての同期を防げる。そして12月20日以降、記録は完全に消失する」
凛は頷いた。「あと8日間……長い戦いになる……」
「大丈夫」美波が言った。「一緒に乗り越えよう」
時計を見る。12月12日 午前11時。
第一回同期まであと34時間。
準備を始める時間だった。




