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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第六章「ムネモシュネの破壊」
123/133

第122話「悪夢の再来」

12月12日 水曜日 午前3時。


凛は悪夢を見ていた。


暗闇の中。無数の声が呼んでいる。


「凛……」「凛……」「こっちに来て……」


凛は起き上がった。汗をかいている。心臓が速く鳴っている。


ドクン…ドクン…ドクン…


脈を測る。15秒で18回。1分で72回。


「72……」凛が呟いた。「上がってる……」


昨日まで68だったのに。4も上がっている。


なぜ? 記録は消えたはず。ムネモシュネを破壊したから。73Hzも止まったはず。


なのになぜ心拍数が上がる?


「凛?」美波が目を覚ました。「どうしたの?」


「心拍数」凛が震える声で言った。「72になってる……」


美波の顔が青ざめた。「え? 昨日まで68だったのに……」


「うん……」凛が頷いた。「でも今測ったら72……」


美波はすぐに凛の手首を掴んだ。自分で確認する。


ドクン…ドクン…ドクン…


確かに速い。


「本当に72……」美波が呟いた。「なぜ……ムネモシュネは破壊したのに……」


二人は顔を見合わせた。不安。恐怖。そして最悪の予感。


もしかしてまだ終わっていない? 記録はまだ続いている?


「ニュース見てみよう」美波がスマートフォンを取り出した。画面を見る。


「続報:記憶障害、回復せず


記録メディア現象で記憶を失った人々のうち、一部が依然として記憶を回復していない。専門家は『予想より深刻』と指摘」


「新たな症状


一部の人々が新たな症状を訴えている。『誰かの声が聞こえる』『自分が自分じゃない気がする』など。心療内科への受診者が急増」


凛と美波は息を呑んだ。


「これ……」凛が呟いた。「記録がまだ続いてる……?」


「でも」美波が言った。「ムネモシュネは確かに破壊した……磁気ドラムも停止した……なのになぜ……」


凛は何かを思い出した。柳沢正臣の言葉。渋谷のビジョンで見た。


「上書き消去は一時的な解決に過ぎません」「今夜の共鳴によりすべての上書きは無効化されます」


そしてもう一つ。何か重要なことを言っていた。でも思い出せない。


「凛」美波が真剣な顔で言った。「調べよう。柳沢正臣の研究をもっと詳しく。もしかしたら私たち見落としてるかもしれない」


凛は頷いた。「うん。大学に行こう。図書館で論文を探す」


二人は急いで準備をした。

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