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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第六章「ムネモシュネの破壊」
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第120話「世界の変化」

「速報:渋谷で謎の集団が一斉に倒れる


午後8時15分頃、渋谷スクランブル交差点で『73』と唱えていた集団が突然一斉に倒れた。警察と救急隊が現場に急行。現在意識を確認中。同様の現象が大阪、名古屋、福岡など全国の主要都市でも報告されている」


凛は次々とニュースを見た。


「続報:倒れた人々が目を覚まし始める


倒れていた人々が次々と意識を回復。ただし全員が記憶喪失の症状を訴えている。自分の名前は分かるがここ数日の記憶がないとのこと」


「海外でも同様の現象


ロンドン、ニューヨーク、北京など世界中の主要都市で同様の現象。白い服を着た集団が一斉に倒れその後意識を回復。WHOが緊急会議を招集」


「専門家『集団ヒステリーか』


心理学者は『集団ヒステリーの可能性』と指摘。ただし世界同時に発生したことに疑問の声も」


凛と美波と香織は顔を見合わせた。


「成功した……」凛が呟いた。「本当に成功した……世界中で記録された人たちが解放された……」


美波が凛の手を握った。「やったね凛。あなたが世界を救ったんだよ」


でも凛は複雑な気持ちだった。


確かに記録から解放された。でも記憶も失われた。ここ数日の、いや、ここ数週間の記憶が。


記録されていた時間の記憶が、すべて消えた。


それは幸せなことなのか。悲しいことなのか。


「帰りましょう」香織が言った。「もう遅いわ」


三人はタクシーを拾って帰路についた。車窓から見える渋谷の街。ネオンが輝いている。でもあの異様な白い服の人々はもういない。


みんな病院に運ばれたか、家に帰ったか。


ただ普通の夜。平和な夜。


凛は窓に映る自分の顔を見た。疲れている。目の下にクマ。でも目には光がある。


生きている光。


「ねえ、凛」美波が言った。「今夜泊まってもいい? 一人じゃ心配で」


「うん」凛が微笑んだ。「泊まって。一緒にいて」


午後11時。凛の部屋に戻った。


部屋の中央には、まだ5つのメディアが並んでいた。VHS、カセット、MD、フロッピー、8mmフィルム。


でももう何の力もない。ただの古いメディア。


「これ、どうする?」美波が聞いた。


「捨てる」凛が答えた。「もう必要ない」


でも今夜は疲れすぎていた。明日にしよう。


二人はソファに座り込んだ。テレビをつける。ニュースが流れている。


「渋谷の混乱は収束。記憶喪失の原因は不明。政府が調査委員会を設置」


凛と美波は顔を見合わせて笑った。


真相は永遠に明かされないだろう。73Hz、ムネモシュネ、記録。すべては闇の中に消える。


それでいい。


「おやすみ、凛」美波が言った。


「おやすみ、美波」


二人は眠りについた。深い、深い眠り。


戦いが終わった安堵の眠り。

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