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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第五章「73の意味」
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第116話「母の計画」

凛のスマートフォンが鳴った。


着信:母


凛はすぐに出た。「もしもし」


「凛!」母の声。切羽詰まった声。「無事なの!?」


「うん、今渋谷にいる……」


「渋谷!?」香織が叫んだ。「危ない! すぐに離れなさい!」


「大丈夫。今地下のカフェにいる。73Hzの影響はほとんどない」


「でも」香織が言った。「ニュース見た?」


「見た……正臣のメッセージ……」


「そう……」香織が深くため息をついた。「彼は本当にやるつもり。人類を一つにする計画」


「でも」凛が聞いた。「上書き消去が無効化されるって本当なの?」


香織はしばらく沈黙してから答えた。


「分からない……正臣の理論は複雑すぎて私にも完全には理解できない……でも一つだけ分かることがある」


「何?」


「ムネモシュネ」香織が言った。「あの黒い箱。あれがすべての源。あれを破壊すれば、すべての記録が無効化される。上書き消去の無効化も止められる」


凛はそれを思い出した。そう。前に母が言っていた。ムネモシュネを破壊する。それが唯一の根本的解決。


「でも」凛が言った。「柳沢邸にはどうやって入るの? 記録された人たちが守ってるんでしょ?」


「今は」香織が答えた。「チャンス」


「え?」


「記録された人たちはみんな渋谷に集まってる。柳沢邸は今空っぽかもしれない」


凛の心臓が速く鳴り始めた。チャンス。今ならムネモシュネを破壊できるかもしれない。


「お母さん」凛が言った。「行く。柳沢邸に。そしてムネモシュネを破壊する」


「でも凛、危険よ」


「分かってる。でもやらなきゃいけない。これが最後のチャンス」


香織は娘の決意を感じた。


「分かった……なら私も行く。今からそっちに向かう。田中教授にも連絡して電磁石を借りる。そして三人で柳沢邸に侵入する」


「午後8時、渋谷駅で落ち合いましょう」


「分かった」


電話が切れた。


凛は美波を見た。「美波、聞いてた?」


「うん」美波が頷いた。「行くんだね。柳沢邸に」


「うん……でもあなたは来なくていい。危険だから」


美波は首を振った。「何言ってるの。私も行く。ここまで来て一人にするわけないでしょ。友達だもん」


凛の目から涙が溢れた。「ありがとう……本当にありがとう……」


美波が凛を抱きしめた。「一緒に行こう。そして終わらせよう。この記録を」


二人はカフェを出た。午後7時30分。外はまだ混沌としていた。白い服の人々が至る所にいる。


でも交差点から離れれば73Hzの影響は弱い。


二人は渋谷駅に向かった。そこで香織と待ち合わせ。そして柳沢邸へ。


最後の戦い。

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