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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第五章「73の意味」
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第114話「共鳴と避難」

73Hzのうなりがさらに強くなった。


スクランブル交差点の大型ビジョンが点滅し始めた。街灯も点滅している。電気系統が影響を受けている。


そして白い服の人々が動き始めた。いや、動いたというより揺れ始めた。全員が同じリズムで。73回/分のリズム。心拍数と同じ。


左右に。前後に。ゆっくりと。まるで海藻が波に揺れるように。


「何これ……」美波が呟いた。


そして白い服の人々が口を開いた。全員が同時に。そして歌い始めた。いや、歌というより詠唱。


「73」

「73」

「73」


ただその数字を繰り返す。数千人が同時に。同じリズムで。73回/分のリズムで。


その声が重なり合い、共鳴し、巨大な波になる。


空気が振動している。凛の身体も振動している。


心臓がまた速くなり始めた。


「やばい……」凛が呟いた。「美波、心拍数測って」


美波が凛の手首を掴んだ。脈を測る。


15秒で18回。1分で72回。


「72……」美波の顔が青ざめた。「上がってる……さっきまで68だったのに……」


「共鳴してる……」凛が答えた。「数千人の73Hz……それが私の心拍数を引っ張ってる……このままじゃまた73になる……」


美波が凛を引っ張った。「逃げよう! ここから離れないと!」


二人は走り出した。交差点から離れる方向へ。


でも73Hzの影響は広範囲に及んでいた。どこまで行ってもまだ聞こえる。


ブーーーーーーーーーン……


低周波のうなり。


二人は必死に走った。交差点から1ブロック、2ブロック、3ブロック。


でもまだ73Hzが聞こえる。弱くはなっているが、まだ影響がある。


「ここ!」美波が建物を指差した。


カフェ。地下のカフェ。


二人は階段を降りた。地下。扉を開ける。中に入る。扉を閉める。


そこは静かだった。


73Hzの音がほとんど聞こえない。地下だから。壁が厚いから。音を遮断している。


「ここなら」美波が言った。「大丈夫」


凛は心拍数を測った。


ドクン…ドクン…ドクン…


15秒で18回。1分で72回。


「まだ72……でも交差点から離れたから上がらなくなった……」


美波が安堵のため息をついた。「良かった……」


カフェの中には他にも数人の客がいた。みんなスマートフォンで外の様子を見ている。


「すごい……」

「何が起きてるんだ……」

「警察何してるんだよ……」


凛もスマートフォンを取り出した。ニュースサイト。ライブ映像。渋谷スクランブル交差点。


そこではまだ白い服の人々が「73」と唱え続けていた。


そして映像が乱れ始めた。砂嵐。ノイズ。電波が干渉されている。73Hzの影響。

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