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第112話「渋谷へ」
午後6時30分。二人は電車に乗った。
車内はいつもより静かだった。乗客が少ない。みんな渋谷を避けているのか。
でもところどころに白い服を着た人々がいた。座席に座って何かを持っている。記録メディア。そして虚ろな目で窓の外を見ている。
凛と美波はその様子をじっと観察した。
「増えてる……」美波が小声で言った。「先週より明らかに増えてる……」
確かに。先週ニュースで見た時は数百人だった。でも今は電車の中だけでも数十人。全国で何千人、何万人になっているかもしれない。
午後6時50分。渋谷駅に到着した。
ホームは白い服の人々で溢れていた。みんな同じ方向に歩いている。スクランブル交差点へ。
凛と美波はその流れに紛れ込んだ。階段を上る。改札を出る。そして地上へ。
渋谷の夜。ネオンが輝いている。でも異様な雰囲気。
至る所に白い服の人々。数百人。いや、千人以上。すべてスクランブル交差点に向かっている。
「すごい……」美波が呟いた。
凛も圧倒されていた。これだけの人が記録されている。73Hzに支配されている。
そして今、何かが起ころうとしている。




