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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第四章「カセットテープの記録」
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第104話「限界の予兆」

凛は涙を拭いた。


「美咲……解放してって……でもどうやって……」


美波が考え込んだ。「5つ集めて上書き消去すれば、美咲も解放されるんじゃない?」


「そうかもしれない……」凛が頷いた。「じゃあやらなきゃ。美咲のためにも。お母さんのためにも。お父さんのためにも。そしてすべての記録された人のために」


美波は凛の手を握った。「うん。一緒にやろう」


凛は心拍数を測った。


ドクン…ドクン…ドクン…


15秒で21回。1分で84回。


「84……」「また上がった……」


美波の顔が曇った。「MDを聞いて4も上がった……VHSで68から76へ(+8)、カセットで76から80へ(+4)、MDで80から84へ(+4)」


「このペースだと」美波が計算した。「あと2つ――フロッピーと8mmフィルムを見たら92くらいになる……」


「まだ73じゃない」凛が言った。「大丈夫。そして5つ揃えたらすぐに上書き消去する。そうすれば元に戻れる」


でも美波の表情は晴れなかった。本当に大丈夫なのか。それとも何か見落としているのか。


12月9日 火曜日 午前10時。


ピンポーン――


最後の配達。8mmフィルム。


凛はドアを開けた。封筒を受け取る。少し重い。フィルムだから。


部屋に戻る。美波が心配そうに見ている。


「届いた……」


凛は封筒をテーブルに置いた。


「今日見る?」美波が聞いた。


凛は迷った。昨日MDを見て心拍数が84になった。これ以上見たらどうなるか。


でも時間がない。明日は12月10日。全国で記録者の集会が開かれる日。何かが起こる。その前に5つ揃えて上書き消去しなければ。


「見よう」凛が決めた。「今日8mmフィルムを見る。そして明日フロッピーを見る。5つ揃えて上書き消去する」


美波は頷いた。「分かった。でも慎重にね。心拍数が73を超えたらすぐ止める」


凛は封筒を開けた。中には8mmフィルムのリール。小さな金属製のリール。そして紙が一枚。


「このフィルムを再生するには8mmプロジェクターが必要です」


二人は顔を見合わせた。


「プロジェクター……持ってない……」


「大学に」美波が言った。「映像学科にあるかも」


「行ってみよう」


二人はすぐに大学に向かった。


あと2つ。フロッピーと8mmフィルム。


そして明日――12月10日。


運命の日が近づいていた。

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