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ムネモシュネの箱 ― 73Hzの永遠 ―  作者: 大西さん
第四章「カセットテープの記録」
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第102話「母の警告と決断」

12月8日 月曜日 午前9時。


凛はスマートフォンを見た。母からのメールがもう一通届いていた。


『凛


昨夜電話した後、気になって調べてみた。


柳沢正臣の技術には二つの側面がある。


一つは「完全な記録」。5つすべてを見ると完全に記録される。


もう一つは「上書き消去」。でもこれには条件がある。


5つを「逆順」で見ること。


つまり8mmフィルム→フロッピー→MD→カセット→VHSの順番。


あなたはVHS→カセットの順で見てしまった。


この順番で5つ見ると……完全に記録される。


でも「途中で止めれば」まだ助かる。


今すぐこっちに来て。


母より』


凛は画面を凝視した。手が震えている。


「美波……これ見て……」


美波がメールを読んだ。顔が青ざめる。


「逆順……そんな条件が……」


「私たちは正順で見てる……このまま5つ見たら……」


二人は顔を見合わせた。


その時――ピンポーン。


インターホンが鳴った。


MD。届いた。


凛はドアを開けた。配達員が立っている。無表情。機械的。


「佐々木様ですね」


「はい」


小さな封筒。凛はそれを受け取った。


部屋に戻る。美波が心配そうに見ている。


「開ける?」


凛は迷った。母のメールによれば、このまま見れば完全に記録される。でも見なければ美咲を解放できない。


「お母さんの言う通り、行く?」美波が聞いた。


凛は封筒を握りしめた。中にはMD。美咲の日記。美咲の最後の願い――「解放して」。


「いや」凛が答えた。「見る」


「でも……」


「美咲は言った。『解放して』って。私がやらなきゃ、誰がやるの?」


「でも凛が……」


「大丈夫」凛が微笑んだ。「あなたがいるでしょ」


美波の目から涙が溢れた。「バカ……」


「じゃあ準備しよう。慎重に。少しずつ聞く。何かあったらすぐ止める」


美波は頷いた。「分かった。逆位相音も最大出力で流す」


二人は準備を始めた。でも凛の心の奥底には不安があった。


本当にこれでいいのか。母は間違っているのか。それとも――


でも引き返せない。美咲の願いを叶えるまで。

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