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6話 初めての実戦

「たいへんだ!ミーシャが一人で森に入っちまった!」


アンバーさんの報せを聞き、ウンベールが直ぐ様走り出す。


「シャロン!留守番まかせた!!」


「まかされたよ〜」


ヒラヒラと手を振って父を送り出す。全速力で野原を駆けるウンベールは流石に速い。

数秒も経たない内に姿が見えなくなった。



よし。

落ち着かない様子のアンバーさんを母に任せ、私は早歩きで自室へと戻る。

扉を開けた部屋の奥には、昨日ミーシャから受け取った黒い刀が立て掛けられていた。


ミーシャは魔力が込められた武器を鍛造出来る天才鍛冶師である。

今回私が依頼したこの黒刀は、刃先に魔力が集中しており、驚くべき切れ味を誇る設計だ。


「これなら私の少ない魔力でも、魔物に有効打を与えられるはず。」


前にウンベールに指摘さたのだが、私は魔力量が乏しいらしい。

更にはその少ない魔力を魔法へ変換するコトさえも不得手だった。

生まれつき戦闘向けでは無いのだ、この身体は。


だがそれがどうした。

そんなものは大切な友人を助けに行かない理由にはならないーー





 





幼い身体にムチを打ち、森の中を駆ける。

腰に差した刀の重みを感じつつ周囲に目を向けるが、人っ子1人見当たらない。

このままではただ時間が過ぎるだけだ。


(考えろ。何か手がかりは……。)


時間が経つに連れ、ミーシャの生存率は下がってしまう。

私は乱れる思考を制御し、冷静に周りを観察する。


ふと、視界の端で何かが光った。


明るく綺麗なピンクの髪が陽の光に照らされている。

近寄ってよく見ると、それはミーシャの髪の毛だった。


(こっちか!)


髪が落ちていた方角へ一直線に突き進む。

するとその先で、震えて倒れ込むミーシャを発見した。


その正面には、何やら大きなシルエットが見える。

シルエットは威嚇するように身体を大きく広げ、ミーシャへと襲いかかる。


「させるかぁ!」


接近する勢いそのまま、鞘から抜いた刀をシルエット向けて振り下ろす。

ザンッ!!という心地よい音と共に、刀はその斬れ味を発揮した。


不意をついた攻撃に、敵が大きく悶える。

致命傷とまではいかないが、確かなダメージが通った様子。

急いでミーシャの元へ駆けつけ、

小さな身体を抱えて逃げる。


(魔物の魔力波から少しでも距離をらないと。)


「大丈夫!?ミーシャ!」


「ジャ゙ロォ゙ン゙、ごべぇ゙ん゙!!ヴヂィ゙!……!」


顔をしわくちゃにしてベショベショ泣いているミーシャ。

よっぽど怖い思いをしたのか、流石に今回は反省しただろう。


「よしよし、もう大丈夫だからねミーシャ。あとは私に任せて」


「ぅ゙ぅん゙…!あ゙の゙…あ゙り゙がどぉ゙!!」


ミーシャを降ろし、近くの木にもたれさせる。

ボサボサの髪を整えて上げてから、私は立ち上がった。


このままミーシャを連れて逃げたとしても、私のスピードでは直ぐに追いつかれてしまう。

2人で生きて帰るには迎撃するしかない。ミーシャには辛いだろうけど、もう少しの辛抱だ。

追いかけて来た魔物へと向き直り、刀を構える。


シルエットの正体は大きな熊だった。

しかし、そのサイズは私が知っているモノをより倍以上デカい。

目元には傷跡が刻まれており、威圧感を助長させていた。


「グォォォォォ!!!!」


先ほどの私の攻撃で怒ったのか、明らかな戦闘態勢だ。

巨大な腕を大きく振りかぶり、長い爪で私を引っ掻こうとしてくる。


「くらうかよ!」


刀を用いて大振りをいなす。

日頃からウンベールの猛攻を耐えている私にとって、あからさまな大振りは寧ろ見切りやすい。


問題は攻撃だ。

初撃で与えたダメージも、致命傷には至らなかった。

武器の斬れ味が凄まじいとはいえ、少女の肉体では威力に限界がある。

私の微量な魔力で肉体を強化しても、少し身軽になるくらいだ。


(身軽……身軽か…)


よし。

作戦は決まった。

考えを纏めた私は、自身の真横へと駆け出した。

獲物の逃亡を予感した大熊が、逃がすまいと追いかけてくる。


走り出した私の前には巨木が立ち塞がっている。

それでもスピードを落とさない私と木の距離が縮まり、衝突するように見えたが。


「よっと!」


幹を踏み台に、空へ向けて2回跳ぶ。

ある程度高さを出せたと思った私は更にもう一回、今度は木から離れるよう足の裏で幹を蹴り出した。


急降下する中、真下にいる大熊へと目標を定め、落下と共に刀を振り下ろす。


「おらぁぁぁぁぁぁ!!!」


ズサァ!!!!と重い斬撃音が鳴る。

降下する重力をプラスした、今の私が出せる一番重い攻撃だ。 

「グォォォォォ」という呻き声の後、大熊は倒れた。


異世界に来てから初の実戦。

作戦とは名ばかりの脳筋戦法で勝利を収めたのだった。




ーーーー数分後


「……こっちのハズなんだけどなぁ。」


村への帰り道、私は完全に道に迷っていた。

半ば闇雲にミーシャを探していた為、帰り道をハッキリとは覚えて居なかったのだ。


ミーシャは私の背中で寝ている。

泣き疲れたのか、私が来て安心したのか、ぐっすりである。


トボトボと森の中を歩き続ける。

大熊との戦闘の疲労が残っており目眩がする。

息を上げながら、震える脚を何とか前へと動かし続ける。


ふと、ボヤける視界に建物が見えた。


(ひとまずあそこへ入って身体を休ませよう。)


重たい足を気力で進め、何とか建物に辿り着く。

白色の、洋館を思わせる建物だった。


「すみませーん!」


扉を叩いて中の人を呼ぶが、返事はない。

身体が限界だった。

私は前方へ頭から倒れる。

すると、私が倒れるのと同時に建物の扉が開いた。


「誰だこんな場所に僕を尋ねてくるのは…ってなんだ小娘、他人の家に無断で上がり込むな。」 


倒れ込む私の身体を、男性が咄嗟に受け止めてくれた。

それは茶色い癖っ毛のアーモンドアイ。

黒いメガネと白衣を身に着けた、見るからに日本人だった。

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