17話 進んで戻ってまた進む
ダンジョンを攻略し始めてから1週間。
連日潜っていたこともあり進捗は順調。
攻略に比例して冒険者ポイントも少しずつ溜まっていた。
そう、溜まってたんだよね、さっきまで。
しかし、今の私が保有しているポイントは、先程までの半分にも満たない。
あぁなんてことだろう。
まさかここまで来て、この問題に直面してしまうとは。
「もう一セットだぁ!イチィィィ!」
「「サー!!」」
「ニィィ!」
「「サー!!」」
「……サー!」
ギルド施設内の訓練場に私と男達の声が響く。
ザッパ教官の号令に軍隊のような返事をした私達は、腕を曲げ体を落とし、数十秒後に腕を伸ばしてまた元の体制へと戻った。
ようは腕立て伏せである。
ギルドでは体力テストなるものが週一で行われるらしい。
今週分が先日行われたのだが、なんと成績下位の者達にはポイントの大幅な没収と、教官による筋力トレーニングが義務づけらていたのだ。
しかも、テストもトレーニングも魔力の使用は禁止。
素の身体能力のみで測定を行わなければならないわけで、これが私には非常にまずい。
以前にも言ったが、私の身体は何故か一向に筋肉が発達しないからである。
もちろん、肉体的な成長はしている。
身長は女性にしては高い方だし、胸だって不必要に大きくなった。
だが、どれだけ筋トレを重ねてもムキムキになる気配はなく、魔力無しの身体能力は平均的な女性よりも低い。
よって、体力テストの結果は清々しいほどの最下位。
貯めたポイントの大半を没収された私は教官のトレーニングに直行。現在進行形で濁流の様に汗を流しているというワケだ。
「もっと腹から声を出さんかぁ!!迸れぇ!筋肉を!」
「「サー!!」」
「はぁっ、はぁっ、サ、サー…」
全身が焼けるように熱い。
血液が体内をドクドクと巡る感覚が伝わってくる。
顔中がビショビショで、もはや汗なのか涙なのか区別がつかない。
筋肉だけでなく肺すらも悲鳴をあげており、息を吸うだけで激痛が走る。
だが、続ける。
仮にリタイアしてしまっても殺される様なことはないだろうが、続ける。
これだけ頑張ってなお筋肉はつかないかもしれない。だが、続ける。
義務づけられているからではない。
誰かに努力を認められたいワケでもない。
ただ、積み重ねた先に成長への可能性が僅かでもあるから。
結果は無意味だとしても、この過程にはきっと意味があると信じてるから、続ける。
「ラストォォォ!!!」
「「サーー!!!」」
「っぐ……ッサーー!」
最後の腕立てを終えたと同時に、私の身体は崩れ落ちた。
頑丈な床に顔から激突したが、痛みなんて今更だ。
もう動けない。
というか、動くってどうやるんだっけ。
「ハッ…ハッハッ……ハッハッいたたたたた…やっぱ痛いわ」
自然と笑みが溢れる。
達成感なんてもんじゃ表せない幸福が身を包み、疲れた身体を癒してくれた。
「はぁ…はぁ…これだけのトレーニングのあとに笑えるとか、恐ろしいぜシャロンちゃん」
「オロイさん……」
同室のオロイさんも成長下位組であった。
ふくよかなお腹が激しく動き、まるで別の生き物かのようになっている。
「途中でリタイアする奴も多かったのに、はぁ…はぁ…大したもんだぜ」
「これが漢気ってやつですよ……」
「シャロンちゃん……女の子だろ……」
そうでした。
もう思考も纏まらないや。
「あとその格好……目に毒すぎだ」
「格好…私の?」
確かに、今日の私の服装は布地が少ない。
スポーツブラの様なトレーニングウェアにいつものスカート。
お腹が丸見えになってしまっているが、暑いんだから仕方がない。
「こう言っちゃなんだが……周りの連中にめっちゃ胸見られてたぞ」
「それを知ってるってことは……オロイさんも見てた?」
「……急に冴えないでくれ」
見てたんだな。




